東京都渋谷区の路上で8月20日夜、親子が刃物で刺された事件で、埼玉県戸田市在住の市立中学3年の女子生徒(15)が殺人未遂容疑で逮捕されたことを受け、同市教委が22日、会見した。戸ケ﨑勤教育長は「道徳教育などを通して命を大切にする指導を行ってきたにもかかわらず、こうした事案が発生したことは大変重く受け止めている。決してあってはならない事件であり、どのような理由があろうと他人を傷つける行為は絶対に許されない」とした一方で、「なぜこうした事件を起こしてしまったのか、防ぐ手だてはなかったのか、原因の究明にも努めていきたい」と述べた。
さらに戸ケ﨑教育長は「もう少しで新学期が始まることから、子供たちの心のケアについても対応する必要がある。今後、関係機関との連携を密にしながら、背景などの確認、適切な指導や支援に努めていきたい」と話した。
これまでの報道によると、事件は20日夜に、渋谷区の京王井の頭線・神泉駅近くの路上で起き、53歳と19歳の母娘が女子生徒に刃物で刺され重傷。警視庁は女子生徒を殺人未遂の現行犯で逮捕した。女子生徒は犯行に使った刃渡り約8.5センチの包丁と、約9センチと7.5センチのナイフ2本を持っており、調べに対して「母親と弟を殺す予行練習」だったと供述したとされる。女子生徒については市教委が警察に問い合わせたが報道以上の詳しい情報は得られないため特定できておらず、通っている中学校も把握していないという。
同市教委によると、事件を受け22日朝、同市内の全中学校長が参加して臨時校長会が開かれた。その席上、8月下旬は生徒指導要注意期間であり、▽長期欠席など心配な児童・生徒の家庭とは連絡を密にし、小さな変化やサインを見逃さないよう生活状況等を注視すること▽少しでも気になることは見過ごさないという考えのもと、全教職員で情報を共有し迅速適切な対応をすること▽これまで以上の注意深い観察と、必要に応じてカウンセリングなど適切な指導をすること―――の3点を要請したという。
保護者や生徒に対しては現時点ではまだ事件の説明などは行っていないとした上で、戸ケ﨑教育長は夏休み明けから、「全ての学校で命を大切にする授業や悩みの相談を考えている。新学期が始まってすぐに対応しなければならない」と述べた。