政府は8月26日の閣議で、文科省の幹部人事を承認した。文部科学事務次官に柳孝・文科審議官、次官級の文科審議官には伯井美徳・初等中等教育局長、増子宏・高等教育局長をそれぞれ起用する。永岡桂子文科相は同日の閣議後会見で、全日本私立幼稚園連合会前会長との「不適切会食」に関する調査結果がまとまるなど「当面の課題に一区切りを迎えた」として、幹部人事の一新に踏み切ったことを明かした。
局長級人事では、大臣官房長に望月禎・大臣官房人事課長、総合教育政策局長に藤江陽子・(独)日本学生支援機構理事、初等中等教育局長に藤原章夫・総合教育政策局長、高等教育局長に池田貴城・研究振興局長、科学技術・学術政策局長に柿田恭良・大臣官房総括審議官、研究振興局長に森晃憲・高等教育局私学部長、研究開発局長に千原由幸・科学技術・学術政策局長をそれぞれ起用する。
義本博司・文部科学事務次官、丸山洋司・文科審議官、真先正人・研究開発局長、浅田和伸・国立教育政策研究所長は辞職する。
永岡文科相は同日の閣議後会見で、「適材適所を基本とした人事を行った。柳新事務次官をはじめとした新体制の下で、文部科学行政をより一層推進していく」と意気込みを語った。科学技術行政の経験が長い柳新事務次官に期待することとしては、「岸田内閣における最重要課題の一つである科学技術の基盤の強化、および最先端の科学技術・イノベーションへの投資の拡大、わが国の研究力の強化、教育・スポーツ・芸術文化政策の一層の推進」などへのリーダーシップを挙げた。総合教育政策局長に女性の藤江氏を起用したことについては、性別ではなく「適材適所」を強調した。
また通例、通常国会閉会後の6月ごろに公表される幹部人事が8月下旬までずれ込んだ理由について、末松信介前文科相から「当面の課題に一定の区切りがついた時期に人事異動を行うと聞いていた」と明かし、「国際卓越研究大学の研究および研究成果の活用のための体制の強化に関する法律の成立や、教育未来創造会議の第1次提言、(全日本私立幼稚園連合会前会長との「不適切会食」に関連した)国家公務員の服務規律に関する調査の取りまとめなど、当面の課題に一区切りを迎えたことから、事務次官の交代をはじめとする新しい体制により、文科行政を前進させていくことを決意した」と語った。
【文部科学事務次官】
柳孝(やなぎ・たかし)氏 1964年、新潟県生まれ。立命館大法学部卒。1987年に科学技術庁入庁後、文科省研究振興局振興企画課課長補佐、外務省欧州連合日本政府代表部参事官、文科省大臣官房付科学技術・学術政策局基盤政策課地域科学技術振興室長、研究開発局宇宙開発利用課長、同局開発企画課長、大臣官房政策課長、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)などを経て、昨年9月から文科審議官。
【総合教育政策局長】
藤江陽子(ふじえ・ようこ)氏 1964年、東京都生まれ。早稲田大大学院政治学研究科修士課程修了。1988年に文部省入省後、広島県教委、在中国大使館勤務、文科省スポーツ・青少年局学校健康教育課健康教育企画室長、国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官、文科省生涯学習政策局男女共同参画学習課長、文化庁文化財部長、スポーツ庁次長などを経て、昨年9月から(独)日本学生支援機構理事。
【初等中等教育局長】
藤原章夫(ふじわら・あきお)氏 1964年、岡山県生まれ。東京大法学部卒。1987年に文部省入省後、香川県教委、在フランス大使館勤務、文科省初等中等教育局小学校連絡調整官、高等教育局専門教育課長、大学振興課長、初等中等教育局教職員課長、大学振興課長、大臣官房人事課長、初等中等教育局担当審議官、文化庁文化部長、内閣官房オリンピック・パラリンピックレガシー推進室審議官などを経て、昨年9月から文科省総合教育政策局長。
8月26日の閣議で承認された文科省の他の幹部人事は次の通り。9月1日発令。( )内は現職。
▽大臣官房総括審議官(内閣官房内閣審議官)井上諭一▽大臣官房サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官(大臣官房審議官 高等教育局および科学技術政策連携担当)森田正信▽文化庁次長(内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)合田哲雄▽大臣官房学習基盤審議官(科学技術・学術政策局政策課長)寺門成真▽大臣官房審議官(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構執行役)木村直人▽高等教育局私学部長(大臣官房学習基盤審議官)茂里毅▽国立教育政策研究所長(独立行政法人国立文化財機構理事)永山裕二