今年7月、全日本私立幼稚園連合会の資金約700万円を着服したとして、同連合会前会長の香川敬被告らが逮捕されたことに関連し、文科省は8月26日、矢野和彦官房長ら幹部6人が国家公務員倫理規程に違反する接待などを受けていたとする調査結果を公表した。連合会側からそれぞれ約1万9000円から約12万5000円の飲食接待を受けていたとしている。同省は同日付で6人を減給の懲戒処分にしたことを明らかにした。永岡桂子文科相は同日の閣議後会見で、「幹部職員の処分を行ったことは極めて遺憾。心よりおわびを申し上げる」と謝罪。自身の大臣給与を1カ月返納することに加え、適切な会食だったことを証明する領収書の保存の徹底や研修会の開催といった再発防止対策を講じる考えを示した。
国家公務員倫理規程に違反する接待などを受けたとして、懲戒処分となったのは、▽矢野和彦官房長(減給10分の1、3カ月)▽蝦名喜之官房付(減給10分の2、2カ月)▽伊藤学司官房付(減給10分の1、1カ月)▽淵上孝官房付(減給10分の2、6カ月)▽井上睦子科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課長(同、同)▽先﨑歩日本学術振興会理事(減給10分の1、1カ月)――の6人。また、倫理監督官である義本博司事務次官に対し、厳重注意を行った。
矢野官房長は2015年に約4万5000円、17年に1万9000円、いずれも香川被告が同席する会食で接待を受けた。このうち、矢野官房長が初等中等教育企画課長だった17年の接待については、国家公務員倫理規程が定める「利害関係者」に当たるとした。国家公務員倫理規程では利害関係者との接待や物品の贈与を受けることを禁じている。
矢野官房長は同日、取材に対し「ひとえに私の認識の甘さ。職員を励まし、厳しい時代を果敢に乗り越えていくために、指導的な立場を果たすべきにも関わらず、このような事態を起こしたことを心からおわび申し上げる」と述べた。
このほか、蝦名氏が約8万5000円(1万5000円の物品受領を含む)、伊藤氏が約1万9000円、淵上氏が約12万5000円、井上氏が約7万5300円(8000円の物品受領を含む)と専用車への同乗、先﨑氏が約1万9000円の接待を受けていた。いずれも香川被告が同席していた。
文科省人事課によると、費用を負担したと釈明するケースもあったが、それを証明する領収書などがなく、会食の支払いが1万円以上の場合に必要な届け出もなかった。また、長期間経過しているため、利害関係者に当たるか確認できないケースもあったが、社会通念上、高額な接待になることから、総合的に勘案し処分に至ったとしている。一方で、同省はいずれのケースも便宜供与や行政圧力はなかったと説明した。
同省は18年に、現職の幹部職員が逮捕・起訴されたことをきっかけに、全職員を対象に不適切な会食などを行っていないか調査したとしてきたが、今回明らかになった接待の多くは18年以前に行われていた。永岡文科相は「一部の職員が、国家公務員倫理法および倫理規程に対する理解が不十分のまま回答をしたことで、結果的に違反が確認できなかった」と説明。再発防止策を徹底する考えを示した。
同省人事課によると、具体的な再発防止策として、▽利害関係者および関係が深い事業者や団体のリスト化と人事異動の際の確実な引き継ぎ▽会食の際に自身の支払いを証明するための領収書などの保管の徹底に加え、証明資料として使用可能な「支払い確認証(仮称)」の導入▽国家公務員倫理規程に違反する具体例を学ぶための研修の開催▽関係する事業者・団体に対しての周知――などを行う。
今回の懲戒処分を巡っては、今年7月、連合会の資金700万円を着服したとして、連合会の前会長・香川敬被告と前事務局長・勝倉教雄被告が逮捕された事件に関連し、警察庁から文科省職員が香川、勝倉両被告と会食を行っていたと情報提供があったことから、文科省が調査を開始。調査では、連合会と特に関係が深い初等中等教育局幼児教育課や法人の助成金を扱う高等教育局私学部私学助成課などの職員141人を対象に、香川被告が会長に就任した10年以降、不適切な会食などがなかったか事実確認を行った。