教員の負担軽減に向け、文科省が教職員定数を5158人改善するとともに、教員業務支援員を現行の約2.3倍に当たる2万4300人に大幅に増やすなど支援スタッフを倍増させる方針を固め、来年度予算の概算要求に盛り込むことが8月26日、分かった。教職員定数は小学校の35人学級や教科担任制への対応に加え、中学校の生徒指導やチーム学校の運営体制強化などに応じて新たに500人の定数改善を求める。支援スタッフでは、児童生徒の学力向上を助ける学習指導員を1万8000人、中学校の部活動指導員を2万1000人にそれぞれ大幅に増やす。来年度から本格化する部活動の地域移行では、運営団体と学校との連絡調整を行うコーディネーターの配置などに88億円の支援を行うなど計118億円を要求する。
概算要求では、教職員定数について、▽小学校の35人学級を来年度、小学4年生に適用するために3283人▽発達障害などのある児童生徒への通級指導や外国人児童生徒への日本語指導の充実などの教育課題への対応で425人▽小学校高学年の教科担任制に必要な教員を配置するために950人--の定数改善が今年度予算と同様に盛り込まれる。
これに加え、新たに「学校における働き方改革や複雑化・困難化する教育課題への対応」として500人の定数改善を求める。内訳は、▽中学校における生徒指導や支援体制の強化 250人▽チーム学校や学校DXの推進に向けた運営体制の強化 100人▽離島や過疎地域を含む小規模校への支援 50人▽貧困などに起因する学力課題の解消 100人。
こうした施策を合計すると、来年度予算の概算要求に盛り込まれる教職員の定数改善は5158人となる。一方で、教職員定数には児童生徒数の減少に伴う自然減などが6132人あり、これを改善分から差し引くと、来年度予算概算要求でも教職員定数の微減傾向が続くことになる。ただ、人事院勧告の実施に伴う給与調整分が増額され、来年度予算の義務教育費国庫負担金の要求額は今年度予算よりも93億円多い1兆5108億円となる見通し。
学校の働き方改革と教員の負担軽減を進めるため、来年度予算の概算要求では、公立小中学校で教員をサポートする人材の大幅な増員を盛り込む。
教員業務支援員は、学習プリント準備や採点準備、来客や電話応対、消毒作業など、教員が長時間労働を迫られる一因とされる業務をサポートする人材として、今年度の1万650人から、一気に約2.3倍の2万4300人に増やす。これにより、公立小中学校では、小規模校を除き、1校につき1人配置できる計算だ。要求する予算額は今年度の45億円から103億円に倍増させる。
児童生徒の学力向上を目的とした教員支援を担当する学習指導員についても、今年度の1万1000人から1万8000人に増やす。これまで学習指導員は退職教員が少なくなかったが、大学と連携して教職に関心のある学生を積極的に活用し、教職への意欲を高めることも狙う。要求額は今年度の39億円から50億円に増やす。
中学校の部活動指導員についても、スポーツ庁と文化庁の施策として、支援を強化する。適切な練習時間や休養日の設定など部活動の適正化を進めている教育委員会を対象に、教員に代わって部活動の顧問を担う指導員の配置を促進する施策で、今年度の1万1250人から約1.9倍の2万1000人に大幅な増員を図る。内訳は、運動部1万8000人、文化部3000人を見込む。要求額は今年度の13億円から24億円となる。
こうした教員のサポート人材に対する支援は、義務教育費国庫負担金と同じく、国、都道府県、市町村がそれぞれ3分の1を負担する。
中学校の部活動の地域移行では、受け皿となる運営団体と学校との連絡・調整などを行うコーディネーターを自治体に配置し体制整備を図る。地域の運営団体の体制整備のほか、実技指導を行う指導者の配置や指導者確保のための広域的な人材バンクの設置にも取り組む。また、経済的な困難を抱える世帯の児童生徒が、地域移行後の部活動に参加できなくならないように、参加費用などの支援も行う。これらを合わせた部活動の地域移行への支援として、計88億円を盛り込む。
文科省は8月30日に来年度予算の概算要求を取りまとめ、財務省との折衝が本格化する。政府の来年度予算案は12月下旬に閣議決定され、例年同様ならば、3月末までに国会で可決成立する見通し。