通信制高校の在り方を検討する文科省の有識者会議の第10回会合が8月29日、オンラインで開かれた。現行制度では生徒数に関わらず、「5人以上」とされている教員数を、「少なくとも生徒80人当たりにつき、1人を配置する」ことを柱にした最終まとめ案が文科省から示され、大筋で了承された。これにより、極端に教員数の少なかった学校では、生徒数に応じて配置数が増えるため、さまざまな事情を抱えた生徒が在籍している通信制高校で、よりきめ細かい教育につながることが期待される。
文科省が今回示した最終まとめ案では、通信制高校の教育の質の確保・向上に向けて取るべき対応策として、▽指導方法の在り方▽指導体制の在り方▽質保証の方策▽所轄庁の在り方――の4点にまとめた。具体的な中身については、前回の会議で文科省が提出した素案をほぼ引き継いだが、指導体制の在り方については、「少なくとも生徒数80人当たり、教諭等が1人以上であることを基準として設定していくべき」とし、教員の配置基準について、具体的な数字を明記した。
現在の高等学校通信教育規程では、通信制高校の教員数について、「実施校における通信制の課程に係る副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭および教諭の数は、5人以上とし、かつ、教育上支障がないものとする」とされている。学校の実態に合った柔軟な教員配置を可能とするために定められたが、近年は収容定員が多い通信制高校が増加し、十分な教員配置ができていない可能性が指摘されていた。2021年度の学校基本調査によれば、通信制高校の生徒数は21万8389人、教員数は5558人で、生徒約40人につき教員1人がいることになる。しかし、文科省初等中等教育局の担当者は「1人の教員で見る生徒が100人以上の学校もあるなど、大きなばらつきがある」と説明する。
「生徒80人につき、1人以上の教員」という配置基準について、最終まとめ案は「必要最低」と強調。「教諭等の数については、今後の研究の成果等を踏まえ、必要に応じて見直しを図っていくことが考えられる」と注釈を付けた。また、不登校経験者など多様な生徒が多数在籍し、15~18歳の生徒が増えるなど、若年化している通信制高校では、決して十分な基準とは言えないと指摘した上で、生徒40人当たり1人以上の教員とされている全日制・定時制高校以上に、生徒一人一人に寄り添い、伴走して支援を行う体制を整えるべきとした。
さらに、学習機能だけではなく、社会的機能や福祉的機能も果たしていくことが特に重要とし、学校や設置者が関係法令・ガイドラインで定める内容を実施できているか、確認するための「自己点検チェックシート(仮称)」に、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーといった専門・支援スタッフについての項目を盛り込み、支援の充実に努めるよう求めた。
最終まとめ案は委員から大筋で了承された。一方、時乗洋昭委員(山手学院中学校・高等学校長)は「今後ガイドライン化や法整備がされる時に、単なる教員の数だけで物事を考えるのではなく、専門スタッフを含めたチームによる支援体制ができているのかフォローするものにしてほしい」と、教員配置の数的基準が独り歩きしないよう求めた。吾妻俊治委員(東海大学付属望星高等学校長)は「質を高める上では財政基盤の安定が大切。通信制高校は少なかったり、対象外だったりする補助金がある。GIGAスクールやソーシャルワーカーなど、通信制高校にこそ必要な支援が対象になっていない」と述べた。
会議は今回が最終回で、今後は荒瀬克己座長(教職員支援機構理事長)と日永龍彦副座長(山梨大学教授)に一任する形で、必要があれば事務局が修正し、9月に公表される予定。