文科省の「学校における働き方改革推進本部」の第6回会議が8月29日開かれ、永岡桂子文科相は席上、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の抜本見直しについて、「現在実施している教員勤務実態調査を踏まえ、給特法の法制的な枠組みを含めた教員の処遇の在り方などを検討することが必要」と指摘。教員勤務実態調査の速報値が2023年春ごろに公表される予定とした上で、その後に行われる検討作業に向け、「円滑な検討に資するための準備を加速し、給特法など関連する諸制度の検討事項について、情報収集や論点整理を進めてほしい」と述べ、給特法の抜本見直しをにらんだ準備作業を加速させるよう省内に指示した。文科大臣が給特法の見直しに取り組むスケジュールに言及したのは、これが初めてとみられる。
永岡文科相は会議冒頭、「新学期を迎える中、日々、教育活動と感染症対策を両立し、子供たちのために使命感を持って懸命に取り組んでいる全国の教員に敬意を表するとともに、心より感謝を申し上げる。『教師が教師でなければできないこと』に全力投球ができる環境を整備することは極めて重要。学校における働き方改革の推進に、しっかりと取り組んでいく必要がある」と、あいさつした。
続けて「教員が自信と誇りを持って新たな学校教育に取り組み、改めて国民から尊敬されるよう、教職を魅力あるものにすることが極めて重要となる。そのための環境整備に向け、さらなる取り組みを進めていきたい」と指摘。近く公表する来年度予算の概算要求で、教職員定数の改善や支援スタッフの充実、学校DXの推進、研修の高度化、部活動の地域移行に向けた環境整備など、学校の働き方改革を進める施策を盛り込んでいることを説明した。
さらに給特法の見直しについて、永岡文科相は「現在実施している教員勤務実態調査を踏まえ、給特法の法制的な枠組みを含めた教師の処遇の在り方などを検討することが必要」と言及。「本日の議論を踏まえ、23年春ごろに予定している(教員勤務実態調査の)速報値公表後の円滑な検討に資するための準備を加速し、給特法などの関連する諸制度をはじめとする検討事項について、情報収集や論点整理を進めてほしい」と、出席した文科省の幹部たちに指示した。
最後に「学校における働き方改革は、何か一つやれば解決するといったものではない。国、教育委員会、学校が連携し、それぞれの立場でおいて取り組みを進めていくことが重要で、保護者や地域住民の参画も必要不可欠である。文科省においても、主体性を持って、一丸となって取り組むようにお願いしたい」と、言葉を結んだ。
教員勤務実態調査は全国の小中学校、高校を対象に、8月、10月、11月それぞれの連続する7日間の勤務実態を詳細に調べる。対象数は、小学校が3回合計で1200校、教員3万2000人、中学校が同じく1200校、教員3万5000人、高校が同じく300校、教員1万4000人。2016年度以来、6年ぶりの調査となる。国会の附帯決議では、今回の調査結果を受け、給特法の「抜本的な見直しに向けた検討」を行うよう求めており、教員の長時間勤務の要因ともされる給特法の見直し作業の第一歩と位置付けられている。
永岡文科相はこの日の会議で、教員勤務実態調査の速報値の公表時期を「23年春に予定される」と説明したが、16年度の前回調査の日程を踏襲すれば、速報値が23年4月ごろ、最終報告が24年3月ごろになるとみられる。
その後の給特法見直しに向けたスケジュールについては、現時点では確定したものはない。ただ、国会の附帯決議が求めるように給特法を抜本的に見直すとすれば、月額給与の4%となっている「教職調整額」の取り扱いなど政府予算案に必要な措置を盛り込むことになる。そうなると、臨時国会ではなく、政府予算案が審議される通常国会が法改正の舞台になるとみられる。また、給特法の見直しについては、さまざまな論点が想定されるため、中教審で一定期間の議論が必要との見方もある。給特法の抜本見直しには長い道のりが待っている。