今後の児童館の役割検討 厚労省WGが初会合、年内に報告

今後の児童館の役割検討 厚労省WGが初会合、年内に報告
今後の児童館の役割についての協議を開始した厚労省専門委員会のWG(YouTubeで取材)
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 今後の児童館の在り方を議論するため、厚労省の社会保障審議会児童部会放課後児童対策に関する専門委員会の下に設置された「児童館のあり方に関する検討ワーキンググループ(WG)」が8月30日、オンラインで初会合を開いた。児童館が置かれている現状を踏まえ、今後期待される児童館の役割や子どもたちの居場所としての児童館の位置付けを明確化する。来年4月のこども家庭庁の発足を視野に、年内にWGの議論をまとめ、専門委員会に報告する。

 児童福祉法40条に規定される児童厚生施設の一つである児童館は、18歳未満の全ての子どもたちに、遊びを通じた健全育成を行うだけでなく、子育て家庭への相談に乗るといった多岐にわたる目的がある。2020年10月1日時点で全国に公営2488カ所、民営1910カ所が設置されており、ここ数年の児童館の数は公営が微減、民営が横ばいの傾向が続いている。

 一方、厚労省では18年に児童館の運営や活動の基本的事項、望ましい方向性を示した「児童館ガイドライン」を改正。昨年度から「児童館における健全育成活動等開発事業」を創設し、児童館の課題に応じた取り組み事例の評価・横展開を進めるなど、質の向上にも力を入れている。

 初会合ではこうしたデータやこれまでの取り組みを基に、児童館の現状を把握。委員同士による意見交換を行った。

 全国児童館連絡協議会会長の敷村一元えひめこどもの城園長は「特にこの夏休みは、学校の給食がなくなって痩せていく子がいたり、300円や500円だけ持ってくる子の姿もよく見掛けたりした。コロナ禍で子どもたちの現実の居場所が必要だと、児童館の中で感じている」と、児童館の現場の視点から、福祉的機能の重要性を強調。

 また、安部芳絵工学院大学教育推進機構准教授は、大型児童館の役割は小型児童館とは異なると指摘。「災害があったとき、被災地の児童館が動けなくても県内の大型児童館が動いていき、大型児童館が他の児童館を組織化して、被災地の子どもに遊びを提供することもできる。そうした小型児童館とは違った大型児童館の役割、地域資源をコーディネートすることなどを考える必要がある」と述べた。

 座長の大竹智立正大学社会福祉学部教授は「社会では遊びというと、たかが遊びと捉えられるが、子どもの成長発達における遊びの意義をもう一度社会に訴えていく。コロナ禍で行動が制約されたことが、子どもの成長発達にとってどのような負の要因になったのかを社会に発信して、遊びの意義を周知徹底していくことを児童館の役割として担っていきたい」と述べ、ガイドラインにうたわれている拠点性・多機能性・地域性を発揮していくための施策が必要だと提言した。

 この他にも委員からは、ガイドラインの見直しや児童館職員の待遇改善、中高生の居場所としての位置付け、要保護児童対策地域協議会への参画など、支援や配慮が必要な子どものソーシャルワーク機能の強化、子ども支援における地域・学校との連携などの課題が挙がった。

 WGでは年内に議論の取りまとめを行い、専門委員会に報告する予定で、専門委員会ではこの報告を踏まえ、来年4月に設置されるこども家庭庁に引き継ぐ方針。

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