文科省の「子供の読書活動推進に関する有識者会議」は8月31日、第3回会合をオンラインで開き、次期「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」の策定に向け、自治体や委員から事例発表があった。東京都杉並区では2012年度に全区立学校に学校司書を配置しており、同区教委の各課が連携して学校図書館や学校司書の支援を行っている。学校司書への研修も充実しており、委員からは「区全体で取り組んでいることが非常に大きい。こうした取り組みを他の自治体でも横展開していけるといいのではないか」と評価する声が上がった。
同区立済美教育センター学校図書館支援担当の奈良史香氏は、同区の学校図書館支援について報告した。同区では12年度に区内全校に学校司書を配置しており、学校司書が常駐することにより、1人当たりの年間貸し出し冊数や、学校図書館の授業支援回数も大幅に伸びている。
同区の学校図書館支援の特徴として、奈良氏は「教委の教育人事企画課と済美教育センター、区立図書館が連携し、学校図書館を支援している。連絡会議を定期的に開いて、学校図書館や学校司書に対するサポートを行っている」と説明した。
また、学校司書や司書教諭への研修も充実しており、例えば「学校司書研修」は毎月、司書教諭研修は年間2回など、立場に合わせた研修が行われている。研修内容も多岐にわたっており、タブレット端末を活用した探究学習の事例など、ICTを活用した授業支援に関する研修も実施。研修は対面だけでなく、オンラインやオンデマンド型も取り入れている。
その他、若手教員育成研修や、管理職研修なども行われており、「学校司書以外の教員に対しても、学校図書館の活用法や、子供たちの成長に対して学校図書館が大きな力を持つことを説明している」と話した。
福田孝子委員(埼玉県三郷市教委読書活動支援員)は同区の取り組みについて、「学校司書の全校配置が読書推進においても大きな役割を果たしている」と評価した上で、「各校の学校司書が単独で活動するのではなく、区全体で学校図書館を支援するメリットはどんなことか」と質問。奈良氏は「研修の充実は大きいのではないか。また、本区の学校司書は区の直接雇用なので、学校司書から学校側にいろいろな提案ができるなど、柔軟性も確保されていることもメリットではないか」と答えた。
同有識者会議では、第5次子供の読書活動の推進に関する基本的な計画を策定するにあたって、当事者である子供たちの意見も参考にするとして、9月中に千葉県市川市内の小中学校の児童生徒らに意見聴取を実施し、次回の同会議で報告するとしている。