虐待防止に向けた新総合対策 政府の関係閣僚会議が決定

虐待防止に向けた新総合対策 政府の関係閣僚会議が決定
iStock.com/takasuu
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 政府の「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」は9月2日、児童虐待防止対策の中でも重点的に実施すべき取り組みを整理し、新たな総合的な対策を決定した。児童虐待相談対応件数が依然として多いことから、児童相談所の人員体制について質・量の両側面から支援を強化するなどし、年内に児童虐待防止対策体制総合強化プランに代わる次期プランを策定。スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)、スクールロイヤーの配置促進などを打ち出した。

 関係閣僚会議は、2018年に東京都目黒区で起きた女児の虐待死事件をきっかけに設けられた。内閣府、厚労省、文科省、警察庁、総務省、法務省で構成され、省庁間にまたがる虐待への対応策などを協議する。

 今回の決定では、児童相談所の虐待相談対応件数が増加を続けていることから、これまでの取り組みをフォローアップした上で、虐待予防のための早期対応から発生時の迅速な対応、虐待を受けた子どもの自立支援まで、切れ目のない支援を受けられる体制の構築を目指す。来年4月に発足するこども家庭庁が、今後の児童虐待対策の司令塔としての役割を担うことや、今年の通常国会で成立した改正児童福祉法の円滑な施行などを見据え、重点的に行う取り組みを決め、こども家庭庁の創設を待たずに、できることから速やかに実施していくとする方針を掲げた。

 児童虐待への対応では、都市部を中心に児童相談所の児童福祉司1人当たりの児童虐待相談対応件数が依然として高い水準にあるが、児童福祉司の約半数が児童福祉司としての勤務経験が3年未満であること、改正児童福祉法で一時保護開始時の司法審査や子どもの意見聴取などの制度を整備する必要があることなどから、児童相談所の体制をさらに強化。子ども家庭福祉の認定資格の導入による資質の向上や、ICTの活用による児童相談所職員の業務負担軽減も進める。

 また、18年に策定された「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」の次期プランを年内に策定する。

 学校現場では、引き続き、SCやSSWの配置促進やSNSを活用した相談窓口の整備、教育委員会へのスクールロイヤーの配置支援などによる教育相談体制の強化、児童虐待防止・対応に関するマニュアルの周知徹底や研修を充実させる。

 さらに、子どもの権利擁護の観点から、子どもの意見表明などをサポートする支援員の養成カリキュラム例や子どもの権利擁護に関するガイドラインの作成に関する検討、民法上の懲戒権規定に関する改正法案のできる限り早い国会提出なども盛り込んだ。

 その上で、虐待などの困難を抱える子どもの実態は見えにくく、支援が行き届かないといった課題もあるとして、自治体で個人情報を適正に取り扱いながらも、教育・保健・福祉などに分散している子どもに関する情報やデータを連携させ、要保護児童対策地域協議会(要対協)で活用するなど、潜在的に支援が必要な子どもを早期に発見し、プッシュ型の支援につなげることや、NPO、子ども食堂などの多様な民間機関が行政機関と連携・協働して、個々の家庭に応じた支援を展開していくことなどを盛り込んだ。

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