東京都教委は9月8日、第13回定例会で、都立高校の魅力向上に向けた今後の対応について議論した。都教育庁からは「①教育内容の充実」「②多様な生徒への支援」「③都立高校の特色化」の3つを柱としたプログラムが報告されると、教育委員からは「先生の心の余裕がまず必要」など、まず教員の労働環境の改善を求める意見も相次いだ。同プログラムでは「働き方改革のさらなる推進」として、統合型校務支援システムの稼働や部活動指導員の配置なども盛り込まれている。
都は来年2月をめどに「都立高校の魅力向上に向けたプログラム」(2022年度~24年度)を策定する予定で、11月に素案を公表するとしており、今回の定例会では今年度、すでに実施している施策を紹介するとともに、今後の方向性や目指す姿が示された。
まず「①教育内容の充実」では、段階的な1人1台端末体制の整備、情報教育や理数教育の充実、都立高校生の海外交流、体力テストのデジタル化、生涯の健康に関する相談体制の整備などの施策が盛り込まれ、「生徒が端末を活用して課題解決・価値創造型の教育活動を展開」「豊かな国際感覚を醸成」「データ分析を試作へ反映し、効果的な体力向上施策を実施」といった方向性が示された。
「②多様な生徒への支援」については、不登校生徒への「自立支援チーム」派遣、都内学校の教職員向けのヤングケアラー相談窓口の開設、日本語指導の「特別の教育課程」の編成・実施に向けた準備などを盛り込み、困難を抱える生徒や、日本語指導が必要な生徒に対する支援を一層充実させることを目指すとした。
「③都立高校の特色化」には、工業高校の校名変更や学科改編、不登校経験のある生徒などを受け入れるチャレンジスクールや特色ある学科の開設、通信制課程の「ウェブ学習コース」の試行実施などを盛り込み、「多様な学びに対応できる教育環境を整備」するとした。また「働き方改革の更なる推進」として、統合型校務支援システムの稼働、副校長を支援するための人材や部活動指導員の配置拡大を盛り込み、「デジタルや外部人材などを活用し、教員の負担を軽減」する方針を示した。
これに対し出席した委員からは、教員の労働環境の改善を求める声が相次いだ。「先生たちの仕事量が減らないのに、働き方改革は現実的ではない。(施策を)足したら引くところ、『ここは必要なくなった』というところを可視化していかなければ、教員は今までのルーティン(日常の仕事)としてやってきたことをやめることはできない。先生たちの心に余裕があるとか、休もうと思えば休める時間があるという環境がまず必要」「子供たちは朝早くから学校に来て、夕方までいる。先生たちは、子供が学校にいる間は休めない。先生たちが教科学習など自分の持ち分を充実させるためには、他の人材を活用して空いた時間を作ることを視野に入れた働き方改革が必要」といった意見が上がった。
委員からは他にも「部活動も熱心な先生は取り組んでいただければと思うが、過度な負担にならないようにしてほしい」「学習・健康などのデータを連動させる仕組みを作ってほしい」「学習データをどこまで分析対象とするか、整理が必要ではないか」といった指摘があった。