いじめ認定しなかったのは誤り 大阪府立高の生徒自死で

いじめ認定しなかったのは誤り 大阪府立高の生徒自死で
iStock.com/Jorm Sangsorn
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 昨年4月に大阪府立高校2年生の女子生徒が、生徒手帳に「死にたい。あいつらにいじめられていて辛い」と遺書を残して自死した問題について、府教委は9月8日、いじめ防止対策審議会に設置された弁護士や臨床心理士で構成される調査部会の報告書を公表した。生徒が在籍していた高校で、同級生の男子生徒から化粧を揶揄(やゆ)されるなどのいじめがあったと認定し、自死との強い関連性があると結論付けた。高校側が、生徒からスクールカウンセラー(SC)に対していじめの訴えがあったにもかかわらず、具体的な行為が確認できないとしていじめと認定せず、見守りをするとした対応は誤りとした一方で、生徒の要望を踏まえて、SCが保護者に相談内容を伝えなかったことは、「不適切とは言い難い」とした。

 報告書によると、女子生徒はコロナ禍による最初の長期休校や分散登校があった一昨年に入学。高校側は、新入生全員について入学前に中学校に聞き取りを行い、その上でこの女子生徒について「同じ中学校の女子生徒2人と一緒のクラスにし、1人の女子生徒とはクラスを離す。担任は女性に」という配慮を行っていた。

 2学期になると女子生徒は、友人らのアドバイスを受けて髪を切ったり、化粧に挑戦したりしていたが、同級生の男子生徒から、「来たで」などと言って冷やかされたり、「髪の毛、長くて見えないのに(化粧しても意味がない)」などと揶揄されたりするようになった。10月になると女子生徒は、班で話し合う授業で「目が合うと笑われている気がする生徒がいる」と担任に訴え、保健室に行ったり、遠足を欠席したりするようになった。11月下旬には、教育相談担当の教員にSCによるカウンセリングの利用を希望。12月に行われたカウンセリングでは、6人の男子生徒から悪口を言われるいじめを受けていると相談し、「おうちと担任にはほんまに知られたくない」と答えたという。

 カウンセリング終了後、すぐにSC、養護教諭、担任、教育相談担当の教員らでケース会議が開かれ、女子生徒が通っていた中学校にも電話で聞き取りなどを行った上で、管理職も参加してのいじめ防止対策委員会が開催されたが、ここでは具体的な行為が特定できないとしていじめとは認定せず、見守りを行う方針とし、本人の要望を踏まえて保護者には相談内容を伝えないことにした。

 報告書では、女子生徒が複数の男子生徒から受けていた行為をいじめとし、自死との因果関係があったと認定。SCの対応として、女子生徒から保護者と担任には伝えないでほしいとの要望を受けたが、ケース会議で担任を含めていじめの被害申告を共有したことは「相当」であるとし、一方で保護者には伝えなかったことについては、もし伝えていれば女子生徒との信頼関係を崩してしまう可能性があったとして、「不適切とは言い難い」とした。

 しかし、いじめ防止対策委員会が、いじめを訴えたことが把握されてから10日以上経過してから開かれている点や、このケースがいじめ防止対策推進法における「いじめを受けていると思われるとき」に該当すると判断しなかったなどの高校側の対応は誤りだと指摘した。

 その上で報告書は、今回のケースについて、表面化しにくい細やかな事象を敏感にキャッチすることが十分でなかった結果、具体的なプランニングにつながらなかった面があるとして、多職種連携によるコンサルテーションを受ける機会を確保していくことや、人権学習、自殺予防の取り組みを強化することを提案。トラウマがある可能性を踏まえて接していく「トラウマインフォームドケア」の視点が教職員に必要だとした。

 また、この高校では経済的、心理的支援の必要な生徒が一定数存在していたが、コロナ禍のオンライン授業の準備などで余裕を持った生徒の見守りや対応が十分にできなくなっていたとして、こうした高校における教職員の配置拡充や職場の業務改善、SCやスクールソーシャルワーカーの配置時間、人員の拡充を求めた。

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