教員不足が課題となる中、学生の教員志望の動向を調べた調査の結果が9月9日、中教審の「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」基本問題小委員会の第8回合同会議で報告された。調査結果によると、免許取得のための単位を取得しながらも教員にならない予定の学生では、約3割が教育実習後に、2割弱が座学での教職科目の授業を経験した後に、教員志望度が低下したと回答。また、民間企業の就職活動を経験した後には半数近くが、教員志望度を低下させていた。
今回の調査は、文科省が浜銀総合研究所に委託する形で、今年2~3月にオンラインで実施。教職課程を置く全国199大学の大学4年生(卒業年度)から、9291件の回答を得た。うち、教員免許取得が卒業要件になっていて単位取得済み(見込み)は1693件、卒業要件になっていないが単位取得済み(見込み)は1744件だった。
また、教員免許取得が卒業要件となっている大学の学生や、卒業後に教員になる学生の約9割が、「大学入学前」に教職課程を履修することを決めていた。一方、教員免許取得が卒業要件ではない大学などで、教員免許を取得しても教員にならない学生や、免許の取得に至らない学生では、それより遅く、「大学1年生時」などの割合が高かった。また卒業後に教員になる学生は、教職を最初に目指した時期として「幼児・小学生の頃」や「中学生の頃」など、かなり早い時期である割合が高かった。
次いで、①座学での教職科目の授業②学校体験活動(学校インターンシップ)③教育実習④民間企業の就職活動――を経験した学生に対し、経験後に教職への志望度がどう変化したか(高くなった・低くなった・変化しなかった)を尋ねた。①座学での教職科目の授業は、免許取得に至らない学生では、志望度が「低くなった」と答える割合が2割弱と比較的高くなっていた。
②学校体験活動(学校インターンシップ)や③教育実習については、卒業後に教員になる学生では、経験後に志望度を上げる割合が7~8割と高いのに対し、教員にならない学生では4~5割にとどまった。③教育実習の場合は、教員にならない学生で「経験後に志望度が低くなった」と答える割合も約3割に上った。④民間企業の就職活動については、免許取得に至らない学生や、免許取得はしても教員にならない学生で、経験後に教職への志望度を下げた割合が4~5割程度と高くなっていた。
教員免許取得が卒業要件ではない大学で、教職課程を履修したが免許取得に至らない学生が、免許取得を断念した時期は「大学2年生10~3月」の割合が最も高く21.5%、次いで「大学2年生4~9月」で18.5%だった。全体の約3割は、大学1年生の時期に断念していた。
調査では、教職志望者が受験する自治体の選定基準も尋ねており、結果によれば教員採用試験を受験した学生が受験先を選んだ決め手は「実家がある(近い)地域であること」が8割台と圧倒的に高く、次点の「地域としての魅力があること」(卒業要件、免許種別の違いなどにより2~3割台)、「現在通っている大学と同じ(近い)地域であること」(同2割台)を大きく引き離していた。
中教審の合同会議では、この結果について加治佐哲也委員(兵庫教育大学長)が「教員養成大学に長く勤めている私の実感と一致する。特に、学生が受験する自治体を選ぶ基準は、圧倒的に地元、出身地になっていて、地元志向が強過ぎる。小学校を中心に教員採用倍率が低いところがあるが、その一つの原因になっていると思う。採用倍率の低い教育委員会は、他地域の出身者を採用しようと努力をしているが、学生のこうした意識を前提とした対策を取らざるを得ない」と見解を語った。