厚労省社会保障審議会児童部会は9月14日、第52回会合を開き、先の通常国会で成立した改正児童福祉法の施行に向けて、わいせつ行為から児童を守るための環境整備や子ども家庭福祉の認定資格の創設、児童相談所が一時保護を開始する際の司法審査の導入などの方向性やスケジュールについて、厚労省から説明が行われた。子ども家庭福祉の認定資格について、委員の山野則子大阪公立大学教授は、スクールソーシャルワーカー(SSW)での活用を想定したものにすべきだと提言した。
子ども家庭福祉の新たな認定資格を巡っては、児童相談所などの子ども家庭福祉の現場におけるソーシャルワークの専門性を高める目的で、児童福祉司の任用要件を満たすものとして児童福祉法上で位置付けることや、施設などで配置する際のインセンティブを設定することが予定されており、現在、厚労省の検討会で認定資格の取得に必要な研修などの内容が議論されている。
この認定資格について、スクールソーシャルワークが専門の山野教授は「子ども家庭ソーシャルワークの中で、SSWでの活用ということが想定されていないのではないか。私としては子どもが一番長く過ごすのは学校で、親が分かっていなくても学校の先生が把握していることもあるし、一番長く接しているのは学齢児だと学校ということになる。SSWは連携相手ではなく、仕事の種類は違うが対象は同じ子どもであり、子ども家庭福祉を担う人材ではないか」と疑問を投げ掛け、厚労省と文科省の間で連携がうまく取れていないのではないかと指摘した。
これに対して厚労省子ども家庭局の羽野嘉朗虐待防止対策推進室長は「SSWについては子どもを対象としたソーシャルワークを行う専門家として、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持っている方が担うので、非常に重要だと思っている。新たな認定資格に関して、資格の研修内容について検討する際に、貧困施策や教育分野との連携の重要性を踏まえていく必要があるということと、SSWの皆さんに、新たに検討していく認定資格の取得をしていただけるように、どのような方策を取っていけばよいか、文科省とも連携しながら考えていきたい」と回答。山野教授はさらに「連携ではなく、同じ子ども家庭ソーシャルワークだという認識でもう一度見直していただきたい」と念押しした。
また、この日の会合では、これまで部会長を務めていた秋田喜代美学習院大学教授の任期満了による退任に伴い、内閣府の教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議で座長を務めている前田正子甲南大学教授が新たな部会長に選出された。部会長代理には引き続き相澤仁大分大学教授が務める。