休日を中心とした中学校の部活動の地域移行を巡り、高知県土佐町議会で9月14日、「部活動の地域移行に関して、当事者である子ども、教職員、保護者などの声を十分に聞き、それぞれの地域の実情に合わせて進めること」などを求めた意見書が提出され、全会一致で採択された。15日には同県本山町議会でも、同意見書が全会一致で採択された。
部活動の地域移行は、まずスポーツ庁の有識者らによる検討会議で今年6月に提言がまとめられ、来年4月から休日の実施を先行して段階的に進めていくことになった。しかし、同有識者会議の提言後まもなく、全国市長会が「運動部活動の地域移行に関する緊急意見」を同庁に提出。提言が来年度からの3年間を改革集中期間とし、2025年度を移行のめどとしていることについて、人材や施設の確保、費用負担の問題などの条件整備・合意形成に時間を要することから、期間を限定せずに地域の実情に応じた移行が可能となるようにすることなどを要望している。
土佐町議会で意見書を発議した同町の鈴木大裕町議は、部活動の地域移行に関する問題を約2年前から4回にわたって議会で取り上げてきた。また今年4月からは毎月、県内の教育関係者らと議論を重ね、8月には全国から集まった教員、校長、教育委員、地域スポーツクラブ役員、地方議員、教職員組合役員らと共に、この意見書をまとめた。
意見書では、全国市長会の緊急意見書に賛同の意を表明するとともに、文化系部活動に関しても同様の措置を求め、国において▽部活動の地域移行に関しては、当事者である子ども、教職員、保護者等の声を十分に聞き、それぞれの地域の実情に合わせて進めること▽「人格の完成」に値する豊かな学校教育を守り、教職員の負担軽減を進めるためにも、部活動を含む教員の全ての業務を勤務時間内に収める取り組みも推進すること━━について、特段の措置を求めている。
鈴木町議は「今回の意見書では、部活動を巡って教職員同士、そして教職員と保護者や子どもらとの間に分断を生まないよう、部活動の切り離しには一定の理解を示しつつも、部活動を含む教員の全ての業務を勤務時間内に収める取り組みも推進するという、もう一つの選択肢を提案した」と説明。
地域の実情については、「地域によっては、スポーツクラブなど、部活動を地域で担う受け皿のないところも多く、学校で続けなければ部活動そのものが廃止となる可能性が高い」と分析し、「そのような地域には、部活動に教育的意義とやりがいを感じ、指導し続けたい意思を持つ教職員が優先的に配置されるような人事異動措置があると効果的だろう。逆に、すでに地域の環境が整っており、すぐにでも部活動の切り離しが可能で、むしろ望ましいところもあるだろう。まさにケースバイケースだ」と話した。
また、部活動の地域移行に関して「まずは国が教職員に謝罪するところから、この議論を始めるべきではないか」と意見を述べ、「政府は事あるごとに、『日本が世界に誇ってきた部活動』と口にする。しかしそれを支えてきたのは、実は国ではなく、搾取に耐えつつ踏ん張ってきた教職員だ。本来なら、国が部活動を学校教育の中で曖昧に扱うことで搾取してきた教職員に対して謝罪し、部活動を無理なく運営できるだけの人と予算を配置し、胸を張って世界に誇れるような条件整備を進めるというだけのことではないか」と指摘した。