「指導死ゼロは当たり前」 永岡文科相、遺族らに表明

「指導死ゼロは当たり前」 永岡文科相、遺族らに表明
要望書を受け取る永岡文科相(中央)と伊藤政務官(右から2人目)
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 教員の不適切な指導により自死に至ったとする児童生徒の遺族らでつくる「安全な生徒指導を考える会」と、子供政策に関わる団体代表者や研究者らが9月15日、永岡桂子文科相に面会し、不適切指導に関する記述を充実させた改訂作業中の生徒指導提要や子供の権利を盛り込んだこども基本法を学校現場に浸透させることなどを要望した。出席者によると、永岡文科相は「指導死をゼロにするのは当たり前のこと」と述べ、改訂した生徒指導提要の周知に取り組む考えを強調した。また、こども基本法の学校現場への浸透については、来年4月に設立されるこども家庭庁と連携して取り組む姿勢を示した。

 「安全な生徒指導を考える会」が永岡文科相に手渡した要望書では、▽不適切指導に関するワーキングチームの立ち上げ▽生徒指導提要の児童生徒や保護者などへの広い周知と学校現場への浸透▽生徒指導について適正な手続きを守ることを定めた通知の発出--の3点を求めた。

 面会後取材に応じた遺族の一人はワーキングチームの設置を求めた理由について、「改訂した生徒指導提要では不適切指導があることにしっかり触れているが、まだまだ実態把握ができていない現実がある。不適切指導は学校現場にとって不都合なことなので、隠蔽(いんぺい)される危険もあるし、不適切指導によって子供が亡くなったときの教員に対する処分も自治体によってばらつきがある。こうした課題をワーキングチームで検討してほしい」と説明。

 また、生徒指導に適正な手続きが必要と考える理由については、「生徒指導提要では、少年非行への対応について正確な事実の特定、児童生徒からの聞き取り、本人や関係者からの聞き取りといった手順が書かれているが、生徒指導についてはそうした手順がない。私たちの家族は少年非行ではなく、日常の生徒指導によって亡くなっているので、生徒指導についても適正な手続きをしっかり踏むことを通知で強調してほしい」などとした。

 出席者によると、こうした要望に対し、永岡文科相は「指導死をゼロにするのは当たり前のこと」と応じ、「素晴らしい友人や先生方に出会える場所としての学校を守りたい」と話した。生徒指導提要の周知についても「しっかり頑張りたい」と述べたという。

面会後取材に応じる「安全な生徒指導を考える会」のメンバー
面会後取材に応じる「安全な生徒指導を考える会」のメンバー

 こうした応答について、遺族の一人は「不適切指導をなくしていけば救える命があることが伝わったのかな、と受け止めている」と話した。

 こども基本法の学校現場への浸透については、子ども政策に関わる団体代表者や研究者らで構成される「こども基本法の成立を求めるプロジェクトチーム(PT)」が、永岡文科相に要望書を手渡した。その上で、こども基本法と子どもの権利条約について、各教育委員会や学校の教職員に周知するため、文科省に新たな通知を発出するよう求めた。

 要望書では、今後取るべき施策を①国の計画・指針整備②子どもの生きる権利・守られる権利③子どもの学ぶ権利・育つ権利④子どもの意見表明権・参画する権利――の4分野に整理。策定中の次期教育振興基本計画におけるこども基本法・子どもの権利の位置付けや、学校での子供の人権・権利侵害の実態調査、不適切指導への懲戒指針の整備・厳格化などを挙げている。

 出席者によると、学校現場へのこども基本法の浸透について、「こども家庭庁と連携して取り組みたい」との趣旨を語った。

 面会後取材に応じたプロジェクトチームメンバーの末冨芳日本大学教授は「子供の権利を盛り込んだこども基本法は、学校現場に浸透させてこそ意味がある。大臣がこども家庭庁と連携して取り組む姿勢を示してくれたので、これがスタートになる」と強調した。

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