給食のカレーに漂白剤、教員を逮捕 専門家「子供の心のケア」求める

給食のカレーに漂白剤、教員を逮捕 専門家「子供の心のケア」求める
【協賛企画】
広 告

 勤務校の給食のカレーに漂白剤を混入したとして、埼玉県警東入間署は9月16日、埼玉県富士見市立水谷東小学校(松波徳美校長、児童227人)の教諭、半沢彩奈容疑者(24)=川越市=を威力業務妨害の疑いで逮捕した。児童らは給食を食べる前に異臭に気付いたため、健康被害はなかった。同署によると、半沢容疑者は「昨年度に受け持っていたクラスの担任を外され、人事に不満があった」と供述している。専門家は「信頼すべき存在の教員が加害者だったことが子供に与える影響はあまりにも大きい」として、子供たちの心のケアが重要だと指摘している。

 同署によると、半沢容疑者は前日の15日午前11時15分から午後0時20分ごろに、給食のカレーが入った食缶に、用意していた漂白剤を混入した。同校では16日は給食なしの午前授業とした。

 富士見市教育委員会によると、半沢容疑者は正規教員で3年目。今年度も別のクラスで担任を務めていた。東入間署によると、犯行動機について、半沢容疑者は「昨年度に受け持っていたクラスの担任を外され、人事に不満があった」と供述している。一方、同市教委では「毎年、担任教諭の入れ替えはある。捜査情報は把握していないが、供述のような理由であれば、なぜこのタイミングでの犯行となったのか分からない」と話している。水谷東小学校では16日、教育新聞の取材に対し、事件の詳細について「学校外の方にお伝えすることはできない」とした。

 富士見市には給食センターがあり、そこから各校の配膳室などに給食が運ばれている。教員が子供たちの給食に異物を混入するという異例の事件について、同市教委は「外部からではなく、学校内部の犯行だった。今後、給食に関する安全対策を新たに考えていかなければならない」と指摘。同時に子供たちの心のケアについて、「16日朝よりスクールソーシャルワーカーや、教育相談室の職員を同校に配置し、何かあれば相談できる体制をとっている。子供たちへの心のケアを一番に考えていく」としている。

■ ■ ■

 事件・災害後の学校現場における心のケアに詳しい武蔵野大学人間科学部の藤森和美教授は、「今回、身体的な被害は出なかったが、本来信頼すべき存在の教員が加害者だったことが子供に与える影響はあまりにも大きい。本当に大変なことだったと捉えて、真摯(しんし)に対応していく必要がある。ショックを受ける子や、学校に行きたくない子や、給食が食べられないという子も出てくるだろう」と指摘する。

 今後、学校側に求められる対応として、「まず、ハード面での給食の安全対策をし、説明をすること。そして、子供たちの不安やショックな気持ちを受け入れて、保護者と学校が敵対関係になるのではなく、一緒になって子供たちの安心安全を守っていくような体制をつくっていかなければならない。保護者からの『お弁当を持たせたい』といった要望なども、柔軟に受け入れていくべきだ」と話した。

 藤森教授は「大人が信頼できないという、そういう引き金を引いてしまった。もともと子供たちが持っていたストレスや学校に対する心配事、家庭内の問題などが、こうしたことをきっかけにより強く出てくることもある。攻撃的になったり、身体的不調が出てきたり、そういう子供たちにサポートが必要だ」と注意を促した。

 また、NPO千葉こども家庭支援センターの杉本景子理事長は、今回の事件について「考えられないこと。未然にサインは出ていなかったのか」とした上で、「まず、子供たちにとってどれだけ恐ろしいことだったのかを、教員や保護者も一緒に感じることが必要だ。そして、丁寧に対策を考え、それをきちんと示すことが子供たちの安心につながる」と強調した。

広 告
広 告