市教委の法の理解が欠如 北海道旭川市のいじめで第三者委が報告書

市教委の法の理解が欠如 北海道旭川市のいじめで第三者委が報告書
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 昨年3月に、北海道旭川市で当時中学2年生の女子生徒が公園で遺体となって見つかった問題について、学校でのいじめの事実関係を調べていた同市教委の第三者委員会は9月20日、報告書を公表し、複数の上級生が女子生徒に対して行った行為のうち、SNSで性的な動画を送るよう要求したことなど6項目をいじめと認定した。また、学校や市教委に対して、いじめの重大事態に基づく対応がなされていなかったと批判。抜本的な見直しを求めた。

 公表された報告書によると、2019年4月に市立中学校に入学した女子生徒は、部活動見学で知り合った複数の上級生とオンラインのバトルゲームをするようになったことがきっかけで、次第にLINEで性的な動画を送るようしつこく要求されるなどの被害に遭っていた。6月22日には、公園で上級生からからかわれたのをきっかけに、女子生徒は「もう死にます」と言って川に入り、中学校に電話。教員が駆け付け、膝下まで川に浸かっている女子生徒を保護していた。女子生徒はその後、市内の別の中学校に転校したが、不登校の状態が続き、昨年2月に行方不明となった後、3月に公園で凍死しているのが発見された。

 報告書では、①LINE上で上級生から性的な話題を繰り返され、そのうちの1人とは性的なやりとりが個別のLINEで行われ、公園でも体を触られた②LINEのグループ通話で深夜に公園で集まろうという趣旨の会話をしたが、実際には実行せず、そのことを女子生徒に伝えなかった③①・②とは別の上級生の菓子の代金を負担し続けていた④①・②・③とはさらに別の上級生が、LINEのやりとりで性的な話題や性的な動画の送信要求を長時間にわたって続けた⑤①・②のうちの1人の上級生と③、④の上級生、さらに他の上級生が、女子生徒に対して自慰行為に関する会話を行い、行為の実行を執拗(しつよう)に求めた⑥④の上級生の1人が、女子生徒をからかい続け、③の上級生がパニックのような状態になった女子生徒を突き放すような発言をした――などをいじめとして認定した。

 一方で、生徒が自殺した背景には、抑うつ状態による希死念慮が関与しており、抑うつ状態をもたらした誘因には、これらのいじめや学校での不適応などが関係していると思われると指摘したが、それらがどの程度、どのような形で自殺に関与したかについては、明らかにできるだけの情報が得られなかったために不明であるとした。

 その上で、いじめが起きた中学校では、母親からクラス担任に対して、深夜に女子生徒が上級生から呼び出されていたという相談があったが、いじめに該当するという認識がなく、学校として組織的な対応を行わなかったこと、女子生徒が川に入ったことが明らかとなった後も、いじめの重大事態として対応しなかったことなどを指摘。転校した中学校にも女子生徒へのケアに関して引き継がれていなかったとした。さらに、市教委として、いじめ防止対策推進法の基礎的な理解が欠如していたと批判。法やガイドラインに沿った対応を行えるように組織体制を見直すべきだと強調した。

 報告書を受けて今津寛介市長は、遺族からの意向を踏まえ、市長部局で再調査を行う考えを表明。市教委の担当者は「報告書で示された再発防止策については、早急にできるものから取り組んでいきたい。特にいじめの重大事態の対応マニュアルの策定はすぐに取り掛からなければいけないと考えている」と話している。

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