日本語教師の国家資格化に向けた議論をしている文化庁の「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は9月27日、第4回会合をオンラインで開き、日本語教師の資格取得に際して必要とされる教育実習の具体的な内容を検討した。文化庁からは教育実習の内容は①オリエンテーション②授業見学③授業準備④模擬授業⑤教壇実習⑥教育実習全体の振り返り――で構成され、⑤の教壇実習では原則として5人以上の日本語学習者に対するクラス指導を複数回実施するとした「たたき台案」が示された。委員からは現在行われている教育実習の状況を踏まえた実施上の課題が指摘された。
現在の日本語教師の国家資格化を巡る議論では、国による「登録日本語教員」の要件として、日本語教育機関における筆記試験の合格と、実践的な教育実習の修了が求められており、国は日本語教師養成課程や実践的な教育実習を行う機関を指定することが想定されている。
この日の有識者会議で示された検討の方向性に関するたたき台案では、大学や専門学校などが実施機関となって行われる教育実習の内容が具体的に打ち出され、教育実習は①オリエンテーション②授業見学③授業準備④模擬授業⑤教壇実習⑥教育実習全体の振り返り――を、それぞれ対面を原則に実施することとし、対面のクラス指導以外の指導形態や日本語学習者のレベルなどに応じた、多様な教育実習が設計されることが望ましいと明記した。
また、実施機関には教育実習担当教員を1人以上配置することや、⑤の教壇実習では5人以上の日本語学習者に対するクラス指導を、実習生1人につき1単位時間以上の指導を2回以上行うことなどが盛り込まれたほか、指定された養成機関以外の教壇実習先として、認定を受けた日本語教育機関に設置されているコースや、小、中、高校などと連携した児童生徒に対するコースなどが例示された。
たたき台案について、委員の伊東祐郎国際教養大学専門職大学院日本語教育実践領域代表は「今回の法整備において、筆記試験と教育実習のうち特に教育実習が要になる。これまでは理論重視だったが、理論と実践を架け橋する専門職業人の育成で画期的な改革になる」と、その意義を評価。
その上で「教育実習の在り方を根本的に見直す時期に来ているのではないかと思う。私も日本語学校、日本語教育の関係者から教育実習の場を確保するのが大変だということや、実際の教育実習の外部委託によってほとんど丸投げ状態で、養成課程の先生が直接関わらないことが少なくないと聞いている。私はこの辺を根本的に改善する必要がある」と、教育実習の現状を指摘し、教育実習において、日本語学習者に指導をするだけでなく、日本語学習者のニーズを捉えてプログラムを立ち上げるなどの活動をカリキュラムに位置付ける必要があると強調した。
神吉宇一武蔵野大学准教授は「昨今の状況を考えるとオンラインも非常に重要だと思う。少なくとも①~⑥のどの部分をオンラインに振り替えることができるのかといったことは検討してもよいのではないか。⑤の教壇実習を除き、かなりオンライン化できると思う。⑤の教壇実習に関しても、対面型とオンライン型の両方ができるようになることは、今後の日本語教育を担う場合には非常に重要な能力だと思う」と述べ、オンラインの実習を何らかの形で盛り込むことを提案した。