滋賀県野洲市の市立小学校で、学級担任から特定の児童に「いじめ」があったとの報道を受けて、同市教育委員会は9月29日、記者会見を開き、1学期中に2年生の被害児童に対し学級担任から「○○くん(被害児童)は本当に言葉を知らんな」「○○くんの言うことはスルー(無視)しよう」などの不適切な言動が繰り返し行われていたことを明らかにした。学校は保護者や児童に対しすでに謝罪しており、全校説明会も実施。現在、いじめを行った教員は体調不良で休職しており、学級担任は2学期から別の教員に交代している。この問題について永岡桂子文科相は9月30日の閣議後会見で「体罰や不適切な言動等は、学校生活全体でいかなる児童生徒に対しても、決して許されることではない」と非難した。
市教委によると、市立小学校の2年生の学級で、5月中旬から7月中旬にかけ、週に2~3回の頻度で、言葉の意味が分からずに「○○ってどういう意味?」と被害児童が再三尋ねていたことに対して、学級担任の教員が「○○くんは本当に言葉を知らんな」などと短絡的な言葉で返答していた。さらに7月以降に数回、「○○ってどういう意味?」と聞いてきた被害児童に「うるさいな、○○くんの言うことはスルーしよう、無視しよう」と発言。国語の授業で1学期の振り返りをする際にも「今日は1学期のまとめとして言葉クイズをします。みんなのためではなく、言葉を知らない〇〇くんのためにします」と述べていた。
その後、保護者から市教委に連絡があり、市教委が学校に確認したところ、これらの事実が発覚。学校は保護者や被害児童に対して謝罪を行った上で、夏休みから2学期にかけて学級や学校全体に順次説明を行った。事実の発覚後、教員は体調不良を理由に休職し、2学期からは別の教員が学級担任をしている。
また、1学期末の保護者との個別懇談会の場で、この教員は被害児童の保護者に対し「〇〇くんはADHD(注意欠如・多動性障害)なので、早急に発達検査を受けるべきです。薬を飲んだら落ち着くんじゃないかな」と伝えており、本来、特別な支援が必要と思われる児童に対しては、管理職や学年主任、特別支援教育コーディネーターらで構成される校内の委員会で情報が共有され、具体的な支援策を決めるべきところ、教員が独自に判断していたことも分かった。
会見に先立ち、西村健教育長は「子どもを一番守るべき学級担任が子どもに対していじめ事案を起こしてしまった。本当に子どもたちにつらい思いをさせてしまったことが申し訳なく、深くおわびしたい。当事者はもとより、その保護者さん、さらにクラスの子どもたちに大変なことをしてしまった」と謝罪した。
この学校では昨年度も4年生の学級で教員による児童への不適切な言動が起きており、市教委は再発防止策として、①管理職による所属教職員の指導の徹底②教員の人権感覚を向上させるような研修の徹底③担任を持っていない教員で学年を決めて、できる限り小まめに各学級を回り、教室に複数の目を入れること――に学校として取り組むと説明。特別な支援が必要と思われる児童について校内の委員会で対応を検討するルールについて、全教員に再度徹底させていくとした。
一方、今回不適切な言動を行った教員は50代のベテランで学年主任もしており、業務の多忙さや疲労の蓄積を管理職に相談していた。西村教育長は「心身の極度の疲労が、(不適切な言動に至った)いくつかある理由のうちの一つだったとしても、疲労しているから許される問題ではない」と強調した上で、「本市の教員の平均年齢は36~38歳で、20代がたくさんいる。若手の先生を一人前にする、そこに力を入れてきたがベテランのフォローは弱かったのかなと、今から思えばそう思う。この先生も学年主任をしながら20代の他のクラスの若い先生の支援もしていたので、かなりプレッシャーもあったのではないかと思う」と述べた。
市教委による記者会見が行われた翌日の閣議後会見で、永岡文科相は「教職員による不適切な指導などが、不登校や自殺のきっかけになる場合もあるので、体罰や不適切な言動等は、学校生活全体でいかなる児童生徒に対しても、決して許されることではないと考えている」と強調。生徒指導は児童生徒の特徴や傾向を理解し、特性や発達に応じた指導を行う必要があるとし、改訂される「生徒指導提要」でも不適切な事例が示されていることなどを踏まえ、学校現場に周知徹底していく考えを示した。