公民館を子供の居場所に 生涯学習分科会が振興方策検討

公民館を子供の居場所に 生涯学習分科会が振興方策検討
生涯学習・社会教育の振興方策の具体化に向けて議論を始めた中教審の生涯学習分科会(YouTubeで取材)
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 中教審の生涯学習分科会は10月4日、第121回会合をオンラインで開き、同分科会における議論の整理を踏まえ、今後の生涯学習・社会教育の振興方策についての議論に着手した。この日の会合では自治体からのヒアリングを基に、公民館などの機能強化について意見交換を行い、子供の居場所としての役割やICT環境の整備が遅れている課題を話し合った。

 同分科会では前回会合で、第11期としての同分科会における議論の整理について取りまとめており、デジタル化への対応や社会教育人材の活躍機会の拡充、地域と学校の連携・協働の推進などを振興方策として提言。これを受けて今回から具体的な振興方策の内容についての検討に入った。

 文科省では8~9月に、生涯学習で先進的・特徴的な施策を展開している7市(東京都国立市、埼玉県川口市、長野県飯田市、岐阜県高山市、京都府長岡京市、島根県雲南市、岡山市)にヒアリングを実施した上で、▽公民館等の機能強化▽社会教育人材の養成と活躍機会の拡充▽地域と学校の連携・協働の推進――の3つを論点として提示。この日の会合では、「公民館等の機能強化」と「社会教育人材の養成と活躍機会の拡充」について取り上げた。

 特に「公民館等の機能強化」に関しては、公民館における子供の居場所としての役割の強化や、学校や学校などの他の施設・施策との連携、施設のデジタル基盤の強化、全世代のデジタルデバイドの解消などが挙げられた。

 子供の居場所としての公民館の機能について、清水敬介日本PTA全国協議会前会長は「ヒアリング結果の中から、若い世代の利用が少ない実態が見られたということで、特に小学生であれば夏休みの子供の居場所を提供し、異年齢の地域の大人との交流を図れる場は必要だと思うので、非常に良い考えだ。また、中高生においては空きスペースを活用してもらうという点も非常に有効だ。中高生は地域の図書館も利用していると思うが、夏場になると非常に利用者が多く、なかなか利用したくても使えないことも多い。その観点でも、公民館の利用は有効的ではないか」と評価した。

 松本理寿輝ナチュラルスマイルジャパン代表取締役、まちの保育園・こども園代表は「妊娠期から地域との関わりを充実させていく視点でも、公民館の活用がすでに進んでいる地域もあるが、もっと積極的に活用していくべきだ。妊娠期、そして子供が生まれてからも、就学まで公民館を活用できるような意識を持ちながらやっていくことが大事ではないか。園と小学校をどう架け橋していくかという視点もまさに文科省で議論されている。接続期の子供をつないでいくためにも、公民館などが活用できるのではないか」と、子育て世代の公民館の活用を強調した。

 また、施設のデジタル基盤の強化では、今年4月1日時点で来館者が利用できるWi-Fiがある公民館は36.5%にとどまることが文科省から説明されると、山内祐平東京大学大学院情報学環学環長・学際情報学府学府長はGIGAスクール構想の経験を踏まえ、「ネットワークインフラは非常に大事。一番大事なのは学習活動だが、ネットワークインフラが駄目だと学習活動が全然進まなくて、学校でも子供たちや先生は使うのが嫌になってしまったということがある。足元がしっかりしないと、その上が全然動かないということが起きるので、端末もそうだが、ネットワークインフラは明示的に、国が責任を持って整備をしないと、現場レベルでは整備が進まない」と、国による整備計画の必要性を訴えた。

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