あなたの学校の「学校評価」は実効性のあるものになっているか━━。学校運営の中核的な役割を果たすミドルリーダー向けの「学校組織マネジメント研修」がこのほど、横浜市教委の花咲研修室で行われ、市内の小中高校、特別支援学校から主幹教諭を中心に119人が参加した。全3回のうち、2回目となったこの日の研修では、前回の研修の課題として出された勤務校のSWOT分析結果の共有と、東京学芸大学教職大学院の福本みちよ教授による学校評価を生かした学校づくりに関する講義と演習が行われた。
同研修は市内各校のミドルリーダーのマネジメント能力を高めることや、将来、管理職として活躍することが期待される教員に対して、管理職の仕事の意義について理解を深めることなどを目的として、今年度、全3回の日程で行われている。
この日は、前回7月に行われた研修で課題として出されていた勤務校のSWOT分析の共有からスタートした。SWOT分析とは、組織の外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で要因分析する方法。5校の教員や学校事務職員から分析結果の発表があった。
ある小学校の教員は勤務校の弱みを「コロナ禍の影響もあり、行事を通して子どもたちを育てていくことについて、教職員の中で気持ちのばらつきが出てきている」と分析。見えてきた課題については「すぐに実行可能なものとして、もっと授業内容を家庭に伝わるようにして、家庭学習につなげることなどが挙げられる」と発表した。
特別支援学校の教員は、分析を進める中で「面白い授業をやっている若手教員が多い」ことに気が付いたという。「例えば3Dプリンターを使って面白い授業をやっている先生がいるということが分かり、その話題から『こういうものもあったら、もっといい取り組みができる』などの発言が相次ぎ、11月に予算会議をやろうという話に発展していった」と述べ、「SWOT分析をやってみて、強みや弱みが分かったことはもちろん、そこから校内で具体的なことに話が進んでいったことも良かった」と振り返った。
各学年団でSWOT分析をしてみたという小学校の教員はその理由について、「もっと学年団ごとに裁量権を与えるような学校にしたいという考えがあった」と説明。「改めて自分たちの学年の強みと弱みをメタ認知できたのは大きい。夏休みの終わりに分析したことで、課題を共通理解できただけでなく、どうやったら学年の特色を伸ばしていけるか、2学期に向けてのワクワク感にもつなげられた」と話し、「12月にも再度分析してみて、学年の特色や課題の経過を見ようと思っている」と述べた。
同研修の講師を務める福本教授は「SWOT分析は『原寸大の学校を見る』という意味で有効だ。立場が違えば、見え方も違ってくる。学年団や、学校運営協議会、子どもたちなど、それぞれの立場でSWOT分析ができたら面白いのではないか。学校づくりのコミュニケーションツールになる」と期待を語った。
また、各校で取り組まれている学校評価について、「学校評価は単に事務作業が増えるだけで意味がない」と思っている学校が多いことを指摘。「学校評価をやって、原寸大の学校の姿が見えてきていないのであれば、それはやり方が間違っている。そもそも学校評価とは何かを理解できているか。使い方を間違えると負担にしかならない」と強調し、「学校は目標を設定してPDCAサイクルを回していくが、学校評価はそのサイクルの一つ。皆さんの学校のアンケートは、立てた目標をどう達成できたのかが分かるものになっているだろうか。立てた目標の実施状況が分かるようになっているだろうか。そして、学校評価は保護者や地域住民とのコミュニケーションツールになっているだろうか」と問い掛けた。
他にも現状の学校評価の実態から指摘される点として、目標が抽象的だったり、何をいつまでに行うかが不明確だったりすることを挙げた。評価項目が網羅的過ぎるケースや、外部アンケートの結果をそのまま評価結果としてしまい、アンケートの集計結果から得られる成果や課題を十分に分析・整理していないケースも多いという。「アンケートを学校評価と勘違いしている。アンケートはあくまで評価するための一つのツール」と指摘した。
その後、参加者はグループに分かれ、実効性のある学校評価にするために、勤務校でどんなことができるのかを話し合った。
小学校の教員は「保護者や地域の方たちも、学校のことが分からないと有効な評価はできない。例えば、学校のホームページで日々の情報発信はしているが、果たして有効に生かせているのか。更新されたら保護者などに通知されるわけでもないので、アクセスしてくれなければ発信した情報も見てもらえていないなどの課題があるのではないか」と発言すると、同じグループの教員らも大きくうなずいていた。
中学校の教員は勤務校について、「学校の中期目標があるが、それを具体的にどのように達成していくのかが弱いと感じている」と課題を挙げ、「アンケートなど数字だけで判断しているところもある。例えば教職員がどうしてそういう評価をしたのか、それぞれのコメントなどをしっかり吸い上げて、自己評価につなげていかなければいけない」と話していた。
福本教授は「一つの処方箋があるわけではなく、学校ごとに違うので、皆さんが自分で考えていくしかない。『学校評価を見直してみたい』と思うこと自体が、学校マネジメントを学ぶということ。今日考えたことを勤務校に持ち帰って、同僚や管理職と一緒に学校をつくっていってくれたら」とエールを送った。同研修の最終回は「リーダーシップ」をキーワードに来年2月に行うという。