安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件で、犯人の動機が旧統一教会への恨みであったとされるなど、旧統一教会の問題が社会的に注目されている中、法務省と文科省と厚労省は「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」の議論を踏まえ、信仰に熱心な家庭で育った子ども(宗教2世)に対して、宗教に関係していることのみを理由にして、心理的・福祉的支援や虐待相談、人権相談などで消極的な対応を行わないよう求める通知を発出した。10月11日の閣議後会見で永岡桂子文科相は「学校においても、宗教に関することのみを理由として消極的な対応をすることなく、課題を抱える生徒、児童の早期発見や早期支援、それから対応に努める」ことを強調した。
9月30日に開かれた第2回「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」では、「相談内容が宗教に関わることのみを理由として消極的な対応をしないこと」が関係省庁間で確認され、宗教2世の子どもたちの心理的・福祉的支援の観点から、スクールソーシャルワーカー(SSW)による関係機関との連携・支援やスクールカウンセラー(SC)による心のケアの推進、市町村・児童相談所における虐待対応の周知、子どもの人権擁護活動の強化を推進していく方針が示された。
また、現行法を活用した国民向けのQ&Aを発信することとしており、その中では「学校で宗教などを理由にいじめがあった場合、相談できるところはありますか」など、宗教2世の子どもたちを想定した項目も設けられている。
これを受けて法務省は、各法務局・地方法務局に対して、人権教室をはじめとする人権啓発活動の機会を活用するなどして、宗教との関わりに起因した潜在的な悩みがあれば法務省の人権擁護機関に相談できることや、学校を通じてSSWやSCに相談できることを伝えるよう要請。「子どもの人権110番」や「子どもの人権SOSミニレター」、LINEによる人権相談などで、宗教との関わりに起因して子どもの権利が脅かされているといった相談を受ければ、状況を的確に把握し、適切な助言や学校、児相などの関係機関との連携を積極的に実施することとした。
文科省では、学校でも宗教に関係することのみを理由として消極的な対応をすることなく、課題を抱える児童生徒の早期発見・支援・対応に努めるとともに、法務省の人権擁護機関から情報提供を受けた場合も含めて、児童生徒の心のケアが必要と考えられる場合には、チーム学校として教育相談に取り組むこと、児相などの関係機関と緊密な連携を取ることを求めた。
通知の趣旨について、10月11日の閣議後会見で永岡文科相は「学校においても、宗教に関することのみを理由として消極的な対応をすることなく、課題を抱える生徒、児童の早期発見や早期支援、それから対応に努めることと、児童生徒の心のケアを図る必要があると考えられる事案には、学校内の関係者の情報共有が大事なので、SC、SSWと共に教育相談に取り組むこと、各教育委員会、学校において人権教育の一環として児童生徒の権利を取り扱う場合は、法務省の人権擁護機関の取り組みと適宜連携を図ることなどを周知している」と説明。関係省庁と連携して、児童生徒の心のケアの充実に取り組んでいく考えを示した。
厚労省では、▽身体的暴行を加える▽適切な食事を与えない▽重大な病気になっても適切な医療を受けさせない▽言葉による脅迫、子どもの心、自尊心を傷つけるような言動を繰り返し行う――などの行為を保護者が行った場合には、宗教の信仰など保護者の意図にかかわらず、児童虐待に該当するという基本的な考えを示し、市町村や児相が子どもや保護者の状況、生活環境などを総合的に見た上で、保護者の信仰を理由に消極的な対応を取らず、子どもの側に立って判断することを明記した。
いずれの通知も10月6日付で発出されている。