文科省の「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」は10月17日、第7回会合を開き、文科省の担当者から来年度予算の概算要求などの説明を受けた。委員からは、GIGAスクール環境で多くのデータが活用できるようになった一方、それらのデータを、多忙な学校現場がどう活用できるかなどについて意見が上がった。
文科省は来年度予算の概算要求で、全国6カ所での次世代校務デジタル化モデルの実証研究に新たに10億円を計上しており、事業終了後5年後をめどに全国レベルでのシステムの入れ替えを目指す。また、文科省CBTシステム(MEXCBT)・文科省ウェブ調査システム(EduSurvey)の整備・活用などに10億円(今年度5億円)を盛り込んでいる。
文科省の担当者は「これまでの統合型校務支援システムの整備率は約7割となり、校務効率化に大きく寄与したが、データ連携についていえば、学習系で膨大なデータが生成されつつあり、教育行政もデータ化されつつある。こうした新しい動きに応じて(相互のデータ連携の仕組みを)改善していかなければならない」と、その目的を説明した。
福原利信委員(東京都立田園調布高校校長、全国高等学校長協会)は「あまりに多くのデータが学校現場の教員に下りてきても、教員がそれを全部処理するだけの時間とリソースはない。本当に学校に必要なものが何かを精査して、それが浮き上がってくるようなシステムになるとよい」と指摘。堀田龍也座長(東北大学大学院情報科学研究科教授、東京学芸大学大学院教育学研究科教授)は「こういうデータが欲しい、こういうデータは無理にいらないなどの声を、ぜひ現場からも挙げてほしい」と応じた。
また藤村裕一委員(鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授、教員養成DX推進機構長)は「データをそのまま示しても、先生がどう受け止めてよいのか分からないため、見やすいダッシュボードの設定が大事。一人一人にきめ細かな指導をするためには、教師の支援の記録とその効果に対する評価のデータがセットで必要になる」と語った。
今回の会合ではまた、東京都渋谷区教委の担当者が実際のダッシュボード構築の取り組みを紹介。ベテラン教員の経験と勘による指導方法に過度に依存せず、データによる気付きを可視化して早期の支援につなげるため、学校・学級・児童生徒の学力、体力、学校生活への満足度などのデータを集約していることを報告した。合わせて「データは子供たちの一つの側面のみを可視化したもので、あくまで理解を深める参考情報。対話を重視する必要がある」とも語った。