独自の教育行政職の採用推進 教委の今後の論点案を提示

独自の教育行政職の採用推進 教委の今後の論点案を提示
今後の論点案について検討する調査研究協力者会議(YouTubeで取材)
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 「令和の日本型学校教育」を推進するための教育委員会の機能強化や活性化について話し合ってきた文科省の調査研究協力者会議は10月17日、第8回会合を開き、同会議事務局が示した「今後の論点案」を検討した。今後の論点案では、一般行政職と教員出身者の垣根を超えるキーパーソンとして、教育委員会事務局で専門性のある「教育行政職」の採用を推進していくことを提言。教育委員会会議のチェック機能を実質化させるため、教育委員に対する研修の充実などを図っていくことを打ち出した。

 これまでの議論を整理した今後の論点案では、政治的中立性や継続性・安定性などの観点で、教育委員会の独立が確保されなければならない一方、関係者との連携や組織の活性化を意識的に行わなければ、自前主義に陥ってしまう恐れがあると指摘。外部に開かれた教育行政を展開し、「令和の日本型学校教育」が目指す個別最適な学びと協働的な学びを実現していくために、①教育行政への多様な人材の参画②教育委員会のチェック機能の実質化③総合教育会議などを通じた首長・他部局との連携――の柱で構成。この日の会議では、①と②の柱について具体的な内容を検討した。

 教育委員会には、一般行政職出身者と教員出身者がおり、一般行政職は予算関係や事務処理などを、教員出身者は学校訪問や教育課程などの教育活動の業務に従事する傾向がある。これを踏まえて①では、教員出身者が教育活動以外の事務処理などに多くの労力が割かれないように、業務内容や役割分担を整理する必要があるとした一方で、専ら教員出身者が従事する傾向にある指導系の部署でも、全ての業務を教員出身者に委ねるのではなく、一般行政職や外部の専門家が参画するなどして人材の多様性を確保しながら、バランスの取れた行政運営を実現していく必要があるとした。

 また、専ら教育委員会事務局でキャリアを過ごすことを想定した教育行政職を独自に採用している自治体が都道府県・政令市で16自治体、市区町村で5自治体あるとし、一般行政職と教員出身者の垣根を超えるキーパーソンとして、教育行政職のような採用の在り方を周知していくことも考えられるとした。

 ②では、教育委員会のチェック機能の実質化に向けて、教育委員会会議を活性化するために、教育委員からの提案による議題の設定や、事前の資料配布、説明会の開催、移動型の会議の実施といった具体的な取り組み例を提示。教育委員の勉強会や研修の充実、学校訪問の機会の確保、他自治体の教育委員会の視察などを充実させることで、教育委員が自らの権限や役割を理解した上で教育委員会会議に臨み、質の高い議論につなげるべきだとした。

 出席した委員からは、教育委員の研修や教育委員会議の運営上の工夫について複数の意見が出た。

 青木栄一東北大学教育学研究科・教育学部教授は「現時点での教育委員向けの研修は、もう少し改善する余地があるのではないかと考えている」と指摘。その上で「ICTを使ってオンデマンドで一人一人に研修を届けるようなことができればいいなと思う。そこにクイズを組み込んで、一定の点数が取れないと終わらないというような履修履歴をつけるくらいのことをやらないといけない。教育委員の権限含めて、何ができるのかということが十分に伝わっていない。動画で模擬教育委員会議のロールプレーなどができれば、教育委員自身で何ができるのかを考えることになる。行動につながる研修が何より大事だ」と強調した。

 これについて小﨑誠二奈良教育大学教職大学院学長補佐は「教育委員は多様な人選がされていると思うが、いざ会議になると時間の問題や説明を聞く割合が長くて、結局自分自身の考えを述べたり、他の人と交流したりする時間がないという面もある。インプットはオンデマンドを積極的に活用してもらい、直接集まって会議する場では活発に意見を言ってもらう仕組みもできるのではないか」と提案した。

 座長代理の戸ヶ﨑勤埼玉県戸田市教育委員会教育長は「教育委員会会議が議事や報告の追認に終始しないということ、教育委員が主体性を発揮して発言しやすい雰囲気にすることに尽きる」と述べ、教育委員が独自に議題などで提案を出したり、会議の公開に力を入れたりしている同市教委の取り組みを紹介。「教育委員会事務局にとって教育委員は上司なんだという意識を持てば、事務局が知っていて教育委員が知らないようなことがないようにしたり、事務局でまだ結論が出ていないことも教育委員に報告して、共に知恵を出し合ったりすることができる」と、教育委員会会議の運営を工夫することで、教育委員会事務局の意識改革につながるとした。

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