来年4月のこども家庭庁の発足を見据え、今後の児童館の役割を議論している厚労省社会保障審議会のワーキンググループ(WG)はこのほど、第2回会合をオンラインで開き、取りまとめに向けて、ソーシャルワーク機能の強化などを議論した。
WGは社会保障審議会児童部会放課後児童対策に関する専門委員会の下に設置されたもので、年内に議論を取りまとめ、専門委員会に報告することになっている。冒頭で座長の大竹智(さとる)立正大学社会福祉学部教授は、これまでの議論を踏まえ、取りまとめ案については▽児童館の制度▽児童館のソーシャルワーク機能▽児童館の居場所機能▽大型児童館――の4つの柱で構成することを提案。出席した委員も了承した。
その上で、この日の会合では4つの柱に関して委員から意見が出された。
児童健全育成推進財団の水野かおり企画調査室参事は、同財団が行った「2021全国児童館実態調査」の報告書を基に、児童館のソーシャルワーク機能の重要性を挙げた。「児童館が身近な施設であり、気軽に会話ができる児童厚生員との関係だからこそ、普段の会話から聞き取れる相談が多くある。子どもにとって、例えばヤングケアラーのように家庭内のことを誰かと比べたり相談したりしにくい課題も、児童厚生員の気付きから困りごとへの理解につながるということがある。児童館は相談が主な目的ではなく課題発見の場となっていると思っている。これは子どもだけでなく保護者にも、敷居の低い児童館という場所がとても大事になると思う」と述べた上で、児童館にしかできない課題発見や相談の定義があいまいであり、相談機関や相談場所として看板を出すと敷居が高くなることから、何をもって相談とするのかを明確にする必要があると指摘した。
これに対して所貞之城西国際大学福祉総合学部教授は「小学生、中学生を主な対象とした相談支援と、その保護者を対象とした相談支援の確立が重要だ。相談に関しては『相談もできる』というアピールができればと思う。児童館では乳幼児とその親の子育て支援の実績が積み上がっている。その延長線上として、切れ目のない支援を子どもたちやその保護者に行っていければと考えている。乳幼児から来ていた子どもが学校に入ってからも来てもらえるようにすることが大事だが、その中で保護者との関係も切らないようにすることも大事だ」と応じた。その上で、ソーシャルワークを担う福祉の専門職の配置を求めた。
安部芳絵工学院大学教育推進機構准教授も「困っている、悩んでいることを言語化できない子がいたときに、遊びを鍵として子どもたちに向き合っているのが重要なのではないか。表面的には問題ないような家庭の子どもたちが問題に直面していないわけではなく、ただ言葉として分かりやすい形で表に出ていない。しかし遊びが乱暴だったり、いつもと違ったりすると、児童館の職員は『どうしたのかな』と気付いてソーシャルワークにつなげていくことを日々やっている。つまり、児童館職員が担っているのは、もはや遊びの指導だけではない」と強調し、児童館ならではの遊びを通じたソーシャルワークの考え方を打ち出した。
一方で、大竹座長はさまざまな役割が期待され、現場に求め過ぎていて現状では対応が無理な面もあると問題提起。「約4400ある児童館が一律に同じではなく、基本型の児童館と、機能強化した児童館というようなくくりも考えていいのではないか。全ての児童館に同じことを求めるのではなく、基本は全てやるが、プラスアルファの機能強化型もつくり、そこにはソーシャルワーク機能を担うような職員配置をして機能強化をしていく取り組みも一つあるのではないか」と、機能強化型の児童館を制度的に設けることを提案した。