教員採用試験で協議会が初会合 文科省、早期化イメージ示す

教員採用試験で協議会が初会合 文科省、早期化イメージ示す
オンラインで行われた「教員採用選考試験の在り方に関する関係協議会」の初会合
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 教員採用倍率の低下が続く中、採用試験の早期化や複数回実施などの具体的な対応を検討するため、文科省と都道府県・政令市教委などでつくる「教員採用選考試験の在り方に関する関係協議会」は10月19日、初会合を開き、論点の確認などを行った。その席上、文科省が採用試験の早期化のイメージとして、公務員試験のスケジュールを目安として教員採用試験を1~2カ月、または3カ月前倒しする案を提示。これをたたき台として具体的な議論を進めるとした。同協議会は来年5月をめどに議論の取りまとめを行い、教員採用試験の早期化・複数回実施などに向けた方針を示す。

 永岡桂子文科相は今年9月の教育長会議で、「今後、できるだけ早く、文科省と教育委員会などの関係団体から成る協議会を立ち上げたいと考えている」と表明。「限られた志願者を奪い合うのではなく、教師を目指すことを諦めてしまう方々を再び教師を志望するように振り向けること、新たに教師を目指す方々を増やすこと」が重要だと強調した。

 これを受け、今回設置された同協議会では、教員採用試験の早期化・複数回実施、通年にわたる採用など、教員採用選考試験の在り方を検討するとしており、構成員は文科省、都道府県・政令市教委、日本教育大学協会、全国私立大学教職課程協会、オブザーバーとして(独)教職員支援機構や各校種の校長会、全国知事会などが参加する。

 同協議会は年内に3回程度、教育委員会や大学関係者などへのヒアリングを行い、来年1月からは今後の方針に関する議論を進めた上で、来年5月をめどに取りまとめを行う。文科省は早ければ2024年の採用試験から、新たに取りまとめた方針にのっとり、各自治体で採用試験を実施することを見込む。

 文科省が提示した資料によれば、今年度の教員採用試験では、早い自治体でも6月3週目の実施となっており、6月1日の民間企業選考開始(内々定解禁)より遅く、また地方上級公務員第1次試験日(ほぼ6月3週目)よりほとんどの自治体で遅くなっている。また最終合格発表は、過半数を超える自治体で10月1日の民間企業内定解禁より遅く、地方上級公務員の最終合格発表日程(8月)より遅くなっている。

 

 こうした状況を踏まえ文科省は、教員採用試験以外の主な試験である①地方公務員採用試験日程②国家公務員採用試験日程をそれぞれ目安とした早期化の案を2パターン提示=図表。①では地方公務員(上級)の採用試験日程を踏まえ、教員採用試験をおよそ1~2カ月前倒しにする案が示された。この案では5月ごろに1次試験を行った後に教育実習を実施し、7月に2次試験を行った上で、8~9月に合格発表となる。

 ②では国家公務員(総合職)の採用試験日程を踏まえ、教員採用試験のスケジュールをおよそ3カ月前倒しするイメージが示された。この案では1次試験を4月に行い、5~6月にかけて教育実習を実施した上で2次試験を行い、7~8月に合格発表となる。

 文科省はまた、教員採用試験の早期化に関する課題も指摘。教育委員会側では▽作問開始時期を早める必要がある▽自治体の一般公務員試験の日程と重なる場合、場所・人手の確保が難しくなる▽合否時期が早まるため、不合格者が他業種に流れる可能性がある▽学生の学修状況を踏まえた試験・検査内容とする必要がある――を挙げた。

 一方、教員養成大学では、学校体験活動の実施や教育実習の見直しを含めたカリキュラムと授業日程の見直しを行う必要があること、新卒受験生(学生)にとっては民間就活や一般公務員採用試験と日程がかぶる可能性があることや、教員採用試験の準備を早める必要があることが課題として挙げられた。また、既卒受験生ですでに臨時的任用教員として働いている場合、試験日程が学期中となる可能性があるという懸念も示した。

 文科省の担当官によれば、今回の会合に参加した自治体の採用担当者からは、作問や会場確保などの時期の変更に伴うコスト増や、一部の自治体だけでなく地域ごとなど、ある程度、足並みをそろえて採用を実施することの重要性などを指摘する声が上がったという。

 これまで教員採用試験の早期化・複数回実施などに関しては、中教審「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会・基本問題小委員会などで、「優秀な学生がリスクを避けて、早い時期に民間企業で就職先を決めてしまいたいと、そんな思いから、もともとは教員になりたいと思っていたが、結局民間に流れるということが、ここのところ毎年結構見られる。ネックの一つはやはり採用試験の時期」(橋本幸三前京都府教育委員会教育長)といった意見が寄せられていた。

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