地域活性化への提案を試行錯誤 上越教育大附属中で公開授業

地域活性化への提案を試行錯誤 上越教育大附属中で公開授業
生徒らはタブレット端末を使ってZoomで仙田教諭とつなぎながら、商店街の人たちにインタビューを行った(YouTubeで取材)
【協賛企画】
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 新潟県上越市の上越教育大学附属中学校(桐生徹校長、生徒322人)で10月20日、1年生の総合的な学習の時間の公開授業が行われた。生徒らは来年、市内の高田城址公園で行われる観桜会時に、同校の校舎やグラウンドを活用した「附属観桜会」を企画。そこで地元の高田本町商店街の商品の販売や、体験会などを行う企画を立てている。この日はその企画案を初めて商店街の人や地域の人に提案し、意見交換を行った。商店街の人からは、賛同の意見だけでなく、「この内容ではできない」「うちの店には合わない」といった厳しい意見も出ていたが、生徒たちは今回の意見を基に、さらに企画をブラッシュアップさせていく意欲を見せていた。

 高田城址公園の桜は日本三大夜桜に数えられ、観桜会には毎年多くの観光客らが訪れる。しかし、観桜会に訪れた人がその前後に高田本町商店街に立ち寄ることは少なく、商店街の活性化には結び付けられていないという課題があった。

 そこで、同校の1年生は、来年の3月後半から4月初旬の観桜会と同じ時期に、観桜会会場の中心に位置する同校の校舎やグラウンドなどを活用した「附属観桜会」を企画。同商店街の商品購入に結び付くような体験活動や、同町で使えるクーポン付きのフリーペーパーの作成などを企画してきた。

 この日の授業では、生徒たちはグループごとに同商店街へ移動し、商店の人や地域の人に「附属観桜会グレードアップ計画」の提案をし、意見交換を行った。企画に賛同する店もあれば、「その内容ではできない」といった意見の店もあるなど、提案したことが店のニーズと合わなかったグループもあった。

 例えば、和菓子屋に訪問していたグループは、「附属観桜会」でその店のみたらし団子を売ろうと考えていたが、店の人からは「みたらし団子は寒いと固まってしまう。切り餅などにした方がいいのではないか」と意見をもらった。また、商品を売るだけではなく、バーベキュー用のコンロなどで、団子を焼く体験も考えていたが、店側からは「それは難しいのでは」と言われた。それでも生徒たちは食い下がり、「ホットプレートならできるのではないかと言われたので、もう一度考えてみたい」と、計画を練り直していく意欲を見せた。

 上越発祥の歴史ある織物をつくる体験を企画提案したグループは、店の人から「かなり難しい技法なので、中学生には難しい」と意見された。生徒らは「確かにこれから春までの数カ月でその織物のつくり方を学び、それを体験に参加する人たちに自分たちが教えるのは難しいと感じた。他の提案を考えたい」と話した。

 商店街から戻ってきた生徒たちに、授業を担当した仙田健一教諭は、生徒の提案と店側のニーズが合わないケースがあったことを踏まえ、「皆さんは高田本町商店街を変えたいとか、発展させたいと思ってやっているが、もしかしたら、地域の人は変わりたくないのではないか?」と問いを投げた。

 それに対して生徒らは「自分たちの提案が、本当に商店街のためになっているのか」を話し合った。すると、「商店街の人からは、本当にお客が来なくて困っているという切実な声も聴いた」といった意見や、「今回のような企画が1回で終わってしまっては、地域の人たちのためにはならない」「もう一歩踏み込んだ提案にしないと、商店街のためにはならないかも」といった意見が出されていた。

 仙田教諭は「皆さんが高田本町の人たちを元気にしたいという思いが一番大切だ。高田本町と桜をつなぐ方法を、もっと追求していってほしい。今日はまだ提案の1回目だったので、これからさらに考えていこう」と呼び掛けた。

 生徒らは、今後も数回に渡って商店の人や地域の人と意見交換しながら、企画をブラッシュアップさせていく。企画内容が固まり次第、「附属観桜会」に向けて活動資金を集めるためのクラウドファンディングも行っていく予定だとしている。

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