理系女子高生の増加策を推進 永岡文科相が国会で所信

理系女子高生の増加策を推進 永岡文科相が国会で所信
教育政策の所信を説明する永岡文科相(衆議院インターネット審議中継から)
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 開会中の臨時国会で10月21日、衆議院文科委員会の審議が始まり、永岡桂子文科相は教育政策の当面の取り組みについて所信を明らかにした。学校教育の充実に向けて「教職員が安心して本務に集中できる環境づくり」や「質の高い教師の確保」に全力で取り組んでいくとした上で、学校の働き方改革をさらに推進する考えを強調。理数系教育の充実を目指す中で、「女子高校生の理系選択者の増加に向けた取り組みを推進する」と表明した。また、「経済事情によらず、誰もが質の高い教育を受けられることは大変重要」として教育の無償化や負担軽減を進める考えを示し、学部段階の給付型奨学金と授業料減免の中間層への拡大、奨学金と授業料の柔軟な返還・納付、出世払いの仕組みの創設に向けた検討に取り組む考えを示した。

 あいさつに立った永岡文科相は冒頭、全日本私立幼稚園連合会の前会長らから国家公務員倫理規程に違反する接待などを受けていたとして、幹部職員6人に懲戒処分を行ったことに遺憾を表明。コロナ禍の中で教育活動などを継続している関係者に敬意を表した。

 初等中等教育では、今年9月に学制150年の記念式典を行ったことに触れ、「いつの時代も、教育は国家、社会の礎であり、発展の原動力」と指摘。令和の日本型学校教育を実現するためには「同一年齢・同一内容の学習を前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、『個別最適な学び』と『協働的な学び』との一体的な充実が不可欠」と述べた。

 教職員が安心して本務に集中できる環境づくりの内容については、「小学校35人学級の計画的整備や、高学年における教科担任制の推進、多様な支援スタッフの充実により、指導体制の一層の整備を図り、校務DXの加速を含め、学校における働き方改革をさらに推進する」と説明。給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)など教員の処遇の見直しについても「本年度実施の勤務実態調査の結果等を踏まえ、給特法等の法制的な枠組みを含めた教師の処遇の在り方を検討する」と言及した。

 GIGAスクール構想に関しては、学校のサポート役として都道府県ごとに設置を進めているGIGAスクール運営支援センターの機能強化や、各教育委員会へのプッシュ型の支援を通じて、「1人1台端末活用の『日常化』を具体的に進めていく」と強調。デジタル教科書の活用についても、「英語をはじめとして全ての小中学校等を対象に提供」することで、さらに進めていく考えを示した。

 理数系教育については「初等中等教育から高等教育までを通じて」一層充実する考えを示した。その上で、今年5月にまとまった教育未来創造会議の第一次提言で理工農系の女子学生が少ないことが課題として指摘されたことを背景に、「女子高校生の理系選択者の増加に向けた取り組みを推進する」と述べ、高校段階で理系を選択する女子生徒を増やしていく考えを表明した。

 不登校の児童生徒などに対する学びの機会の保障については「さまざまな課題を抱える子供たちを誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出すことが極めて重要」と力を込めた。来年4月に発足するこども家庭庁との連携も重視。障害や日本語指導、貧困、不登校、 虐待などの困難を抱える児童生徒、特異な才能のある児童生徒、へき地の児童生徒と、さまざまな立場の児童生徒に言及しながら、全ての都道府県での不登校特例校や夜間中学の設置、その他特例制度、オンライン指導や取り出し指導の促進などを通じて「支援の充実を図る」と述べた。

 さらに永岡文科相は「経済事情によらず、誰もが質の高い教育を受けられることは大変重要」として、「幼児期から高等教育まで切れ目ない形で、教育の無償化や負担軽減を着実に実施する」と言及。教育未来創造会議の第一次提言に盛り込まれた▽学部段階の給付型奨学金と授業料減免の中間層への拡大▽ライフイベントに応じた奨学金と授業料の柔軟な返還・納付▽出世払いの仕組みの創設--について検討を進めることを表明した。

 最後には「私は、女性の視点、母親の視点を大切にしながら、できる限り現場に足を運び、その声にしっかりと耳を傾け、さまざまな課題に対して果敢に取り組む」と述べ、所信の説明を終えた。

永岡桂子文科相が衆議院文科委員会で表明した所信の概要
(テーマ別タイトルは教育新聞が追加)

総論

 先般、倫理規程等に違反する供応接待等を受けた幹部職員の懲戒処分事案が発生したことは誠に遺憾です。再発防止策を講じ、服務規律の遵守の一層の徹底を図るともに、引き続き省改革を推進し、文部科学行政に対する国民の信頼回復に向けて全力を挙げてまいる所存です。

 新型コロナ感染症は、いまだ収束に至っておりません。困難な状況下で活動の継続に尽力されている全ての方々に、改めて敬意を表します。 文部科学省が担う分野の歩みを止めないという強い決意で、引き続き、感染拡大の防止と、学びの継続をはじめとした社会経済活動との両立に取り組んでまいります。

 旧統一教会に関しては、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権の行使に向けた手続きを進めるため、その基本的な考え方や基準の検討に速やかに着手するほか、関係省庁と連携して対応を進めてまいります。

初等中等教育

 明治5年の「学制」発布から150年を迎えた本年9月、天皇皇后両陛下の御臨席の下、記念式典等を執り行いました。いつの時代も、教育は国家、社会の礎であり、発展の原動力です。新しい資本主義の柱の一つである「人への投資」を強化し、子供たち一人一人が自ら個性を磨き、創造性を伸ばし、国際社会で活躍できる心豊かな国民に成長するよう、教育振興、そして教育投資の充実に努めてまいります。

 全ての子供たちの可能性を最大限に引き出す「令和の日本型学校教育」の実現のためには、同一年齢・同一内容の学習を前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、本年度から高等学校においても開始された新学習指導要領の下での、「個別最適な学び」と「協働的な学び」との一体的な充実が不可欠です。

学校の働き方改革

 質の高い教育を実現するため、教職員が安心して本務に集中できる環境づくりや、中央教育審議会の議論も踏まえた質の高い教師の確保に全力で取り組んでまいります。小学校35人学級の計画的整備や、高学年における教科担任制の推進、多様な支援スタッフの充実により、指導体制の一層の整備を図り、校務DXの加速を含め、学校における働き方改革をさらに推進します。

 また、本年度実施の勤務実態調査の結果等を踏まえ、給特法等の法制的な枠組みを含めた教師の処遇の在り方を検討します。特別免許状の積極的な活用等を促進し、多様な専門性を持つ社会人が教職に就きやすい環境整備も進めてまいります。

 加えて、教育公務員特例法の改正を踏まえた、新たな教師の学びを実現する研修の高度化を進めます。

GIGAスクール構想・デジタル教科書

 GIGAスクール構想を力強く前に進めるため、運営支援センターの機能強化や教育委員会への積極的な支援により、一人一台端末活用の「日常化」を具体的に進めていきます。その際、デジタル教科書については、英語をはじめとして全ての小中学校等を対象に提供し、児童生徒の学びの充実に向けて、活用を進めてまいります。

理数系教育・女子高生の理系選択

 初等中等教育から高等教育までを通じて理数系教育を一層充実するとともに、女子高校生の理系選択者の増加に向けた取り組みを推進します。

送迎バスの安全対策・学校安全

 痛ましい通園バスの事故が二度と起こらないように、送迎バスの安全装置の義務化と支援措置を含む、緊急対応策を関係省庁と連携し実行するとともに、通学路を含む学校安全の取組も推進してまいります。

児童生徒への性暴力

 児童生徒等に対する性犯罪・性暴力の根絶に向け、「生命(いのち)の安全教育」の取り組みを進めるとともに、教育職員性暴力等防止法を踏まえた取り組みを徹底してまいります。

コミュニティ・スクール

 子供たちに豊かな学びを保障するため、社会が一体となって教育活動を支えることが必要です。まず、全ての学校での学校運営協議会制度の導入に向けた取り組みを加速してまいります。

部活動の地域移行

 休日の部活動について、さまざまな課題に対応しつつ、地域の実情にあわせ、令和5年度から3年間を目途に地域移行に取り組みます。

学びの機会保障

 不登校をはじめ、さまざまな課題を抱える子供たちを誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出すことが極めて重要です。また、子供を巡る、複雑化し、多岐にわたる課題に対応する司令塔としてのこども家庭庁との連携も重要です。

 障害や日本語指導、貧困、不登校、 虐待等の困難を抱える児童生徒、特異な才能のある児童生徒、へき地の児童生徒等については、不登校特例校および夜間中学の全都道府県等での設置やその他特例制度の活用、オンライン指導・取り出し指導促進や実証研究の実施といった、支援の充実を図ります。また、子供たちが安心して学校で過ごせるよう、医療的ケア児への支援の充実や養護教諭等の支援体制の強化を進めてまいります。また、本年6月に成立した法律に基づき、在外教育施設における教育をさらに振興します。

いじめ

 いじめ問題については、昨今も痛ましい事案が続いており、学校や教育委員会の対応が不十分であったと指摘される事例も見られます。これらの事態を大変重く受け止め、いじめにより子供たちが深く傷つくことがないよう、現場の状況も踏まえ、法律や基本方針等の理解の徹底を図るとともに、早期の組織的対応の徹底・関係機関との連携推進等を教育委員会に強力に指導し必要な施策を講じてまいります。

教育の無償化・負担軽減

 経済事情によらず、誰もが質の高い教育を受けられることは大変重要です。 幼児期から高等教育まで切れ目ない形で、教育の無償化や負担軽減を着実に実施します。特に学部段階の給付型奨学金と授業料減免の中間層への拡大や、ライフイベントに応じた柔軟な返還・納付、出世払いの仕組みの創設に向けさらに検討を進めます。また、現下の物価高騰の状況を踏まえ、各自治体における学校給食費等の保護者負担軽減に向けた取り組みを促進してまいります。

終わりに

 子供は国の宝、国の礎です。文部科学行政は、「人」を育み、「人」の英知や創造力を最大限引き出すことにより、国民の皆さまの人生を幸福で豊かなものにし、我が国の成長の源泉ともなるものであり、いずれも極めて重要です。私は、女性の視点、母親の視点を大切にしながら、できる限り現場に足を運び、その声にしっかりと耳を傾け、さまざまな課題に対して果敢に取り組んでまいります。

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