「教科の学びを切り口に読書を推進すべき」 有識者会議で議論

「教科の学びを切り口に読書を推進すべき」 有識者会議で議論
子どもの読書推進について、オンラインで行われた有識者会議(YouTubeで取材)
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 来年度からの「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の策定について話し合う文科省の第5回有識者会議がこのほど、オンラインで行われた。これまでの論点を整理し、論点まとめに向けて委員らが意見を交わした。「教科の学びを切り口に読書を推進していくべき」「読み物で深めていく力と、何かを調べるときに読んでいく力というのを、それぞれ捉えていく必要があるのではないか」といった意見や、「現状では図書館とICTが分断されてしまっている」などと多くの意見が出された。

 同省総合教育政策局地域学習推進課からは、これまでの議論を整理し、基本的方針として▽不読率の低減▽多様な子供たちの読書機会の確保▽デジタル社会に対応した読書環境の整備▽子供の視点に立った読書活動の推進━━が示された。

 稲井達也委員(大正大学人間学部教授)は「高校の不読率の解消が達成できていない。新しい学習指導要領において探究の科目が複数設置されているが、それらと関連付けていくことが不読率の解消にもつながるのではないか」と指摘。「読書というと文学作品などをイメージされるが、もう少し教科の学びに焦点を当て、そこを切り口として読書を推進していくようなことが、高校生の発達段階においては適切ではないか」と提案した。

 これに対し、福田孝子委員(埼玉県三郷市読書活動アドバイザー)も「読書をひとくくりにするのではなく、読み物で深めていく力と、何かを調べるときに読んでいく力というのを、きちんと捉えていく必要があるのではないか」と賛同を示した。加えて全体を通してICT環境整備の充実に関する記述が多いことに触れ、「発達段階を考慮しながら、デジタルを活用する場面と、紙の力で育てていく場面をもっと考えていく必要がある」と述べた。

 中野多希子委員(東京都立多摩図書館館長)は、最近は図書館に父親や祖父母が読み聞かせしに来ているという例を出しながら、「読み聞かせの浸透を実感している。ただ、同時に、読み聞かせを義務だと考えているような大人も多いと感じている。この策定文にも、家庭での読書は、子どもと共に本を楽しむことが大切だというニュアンスを入れてほしい」と要望した。

 有山裕美子委員(軽井沢風越学園教諭)は、前任校で情報科の教員が図書館に常駐していたことを例に挙げながら、「情報科の教員との連携はデジタル社会においては大事だと思っている。紙の本を借りる時だけ図書館に行くとならないように、1人1台時代、情報を得たい時には学校図書館に行くというような仕組みができてくるといいのではないか。今、学校現場にいると、図書館とICTが分断されているような気がしてしまっている」と話した。

 秋田喜代美座長(学習院大学教授、東京大学名誉教授)は「さまざまな観点から意見を出していただいた。生涯学習や生涯のウェルビーイングにつながっていくための読書であるためには、喜びとか楽しさが読書の中心にあることが重要だ。DXの良さも捉えながら、次期基本計画につなげていけたら」と述べた。

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