国家資格としての日本語教師の制度を具体的に協議している文化庁の「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は10月25日、第5回会合をオンラインで開き、資格の要件となっている筆記試験の内容を検討した。委員からは筆記試験によって日本語教師の質を高めると共に、教師不足の実態を踏まえて、量の確保も踏まえたものにすべきだといった声があり、現職の日本語教師などを想定し、筆記試験の一部や教育実習を免除する経過措置を設ける案が事務局から示された。
昨年に報告をまとめた文化庁の「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」の議論をベースにまとめられたたたき台案によると、筆記試験は国による「指定試験実施機関」が全国各地で年に1回以上実施することとし、日本語教育の基礎的な知識・技能に関する「筆記試験①」と、日本語教育の基礎的な知識・技能を応用した現場対応能力・問題解決能力を測る「筆記試験②」の2つの区分とし、それぞれ独立して合否を判定する。
筆記試験はいずれも多肢選択式だが、「筆記試験②」は音声による出題も想定。「筆記試験①」は国が指定する日本語教師養成機関の課程を修了している場合などは、免除とすることもできる。
この日の会合では、大日向和知夫(一社)日本語学校ネットワーク代表理事が、日本語教育機関の中で「教師不足」が深刻な問題になっていると指摘。「施設必置の制度となる登録日本語教師だが、試験の内容はもちろんのこと、難易度や合格率、これを受ける人たちの受験の負担、こういったことに配慮いただき、たくさんの方が受けられるようにしてほしい。教師の質の充実は大切だが、同時に量の確保は日本語学校としても切実な問題で、この辺にも十分に配慮する必要がある」と、日本語教師の人材確保の観点も反映すべきだと強調した。
これについて事務局は、法務省告示の日本語教育機関に勤める40代以上の日本語教師は非常勤が常勤を上回っているなど、不安定な身分に置かれている状況を報告。すでに一定の指導力を持っている現行の日本語教師が、円滑に新制度に移行できるように、指定の日本語教師養成機関と同等の課程を修了していたり、現職の日本語教師で民間試験に合格したりしている場合は、講習を受けた上で「筆記試験①」や教育実習を免除するなどの経過措置を一定期間設けることが提案され、次回以降も引き続き検討を重ねることになった。