【特報】どうする給特法 ワーク・ライフバランス「満足」わずか5.8%

【特報】どうする給特法 ワーク・ライフバランス「満足」わずか5.8%
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 教員の長時間勤務が社会的な問題となり、文科省も「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の見直しを視野に入れた教員勤務実態調査に乗り出した。教員の働き方や意識を知るため、教育新聞は9月30日から10月6日まで、購読会員および過去のアンケート回答者(公立教員)を対象にウェブアンケートを実施し、485件の有効回答を得た。仕事の満足度を尋ねると、内容ややりがいに関しては32.0%が「満足」、50.1%が「やや満足」と、合計8割超が満足していた一方、ワーク・ライフバランスで「満足」と回答した人はわずか5.8%で、「やや満足」(22.1%)と合わせても27.8%に過ぎなかった。同じく労働時間についても、満足している人は計27.4%と低かった。職場や管理職の状況を尋ねると、一部の人に仕事が偏りがちな職場の様子が浮かび上がってきた。

持ち帰りが常態化、学校で終わらないほどの仕事量

 アンケートではまず、仕事の満足度を「仕事の内容・やりがい」「労働時間」「給与」「仕事と私生活のバランス」の4つの側面から尋ねた。その結果、「仕事の内容・やりがい」では「満足」「やや満足」が合わせて8割を超えるなど、満足度が高かった。子供たちの成長を肌で感じられる教員という仕事に、魅力を感じている人が多いことが分かる。

 ところが、「労働時間」「給与」「仕事と私生活のバランス」ではそれが2~3割と極めて低かった。とりわけ「労働時間」「仕事と私生活のバランス」で「満足」と答えた人はそれぞれ6.8%、5.8%とごくわずかで、労働時間の長さや、それに伴うワーク・ライフバランスの確保の難しさが改めて浮き彫りになった。

 それでは実際、回答者はどのような働き方をしているのだろうか。1カ月当たりの時間外勤務を尋ねると、通常の時期でも43.3%が45時間以上、11.5%が「過労死ライン」とも呼ばれる80時間以上と回答。繁忙期になると、45時間以上は62.3%と過半数を超え、80時間以上も33.2%に上った。回答者に30~40代、いわゆる中堅の割合が高いことも背景にあると考えられるが、教員たちが相変わらず、長時間労働を強いられていることが分かる。

 さらに、自宅などに仕事を持ち帰ることがあるかを尋ねると、通常の時期でも7割が週1日以上は仕事を持ち帰っていることが分かった。「ほとんど毎日」持ち帰るという人も17.3%に上った。繁忙期には、「ほとんど毎日」持ち帰ると回答した人は29.3%となり、学校では終わらないほどの仕事量を抱えている実態もうかがえる。

 

 

「一部の人に仕事が偏りがち」な実態

 こうした教員たちの、職場の雰囲気はどうだろうか。「困った時に気軽に相談できる管理職や同僚がいる」という項目で、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人は計70.3%と高かった。「管理職とのコミュニケーションは円滑である」は同59.6%、「仕事の内容や手順は自分で工夫しやすい」も同59.0%と、比較的高い割合で肯定的な回答が集まった。

 しかし、それ以上に高かったのが「一部の人に仕事が偏りがちだ」という項目で、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人が合わせて87.6%に上った。また、回答がやや二極化したのが「長時間働く人が高く評価されがちだ」という項目で、「そう思う」「ややそう思う」が計34.2%、一方で「あまりそう思わない」「そう思わない」も計33.8%だった。

 さらに管理職の状況を尋ねると、「自身が率先して早く帰るようにしている」(「そう思う」「ややそう思う」の割合が計46.6%)、「教員の私生活に配慮している」(計44.3%)の2項目が比較的高かったものの、前出の「一部の人に仕事が偏りがちだ」という状況を裏付けるかのように、「一部の人に仕事が偏らないよう工夫している」は17.1%と低かった。各教員が責任をもって学級や教科等、校務分掌を預かるという現状の組織では、仕事量の平準化が難しいという一面が改めてうかがえる。

 さらに「保護者や地域など、校外に教員の働き方改革の方針を示している」は計25.2%、「時間外労働を減らす工夫をしている人を評価している」も計19.2%と、振るわなかった。教員の私生活に配慮するなど、意識面での変革は進みつつあるものの、時間外労働を減らす工夫を評価したり、校外への理解を求めたりといった具体的な行動は、まだまだ広がっていないようだ。

 

 

 今回のアンケートの回答者の属性を見ると、次の図表のような特徴がある。また、仕事に対する価値観はどちらかというと革新的な傾向がある。

 

 次回の記事では、教員の長時間労働の一因になっているとしばしば指摘される給特法に関連して、給特法上の働き方の前提と、アンケート結果から見えてきた学校現場の実態との乖離について考えていく。

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