学校における2021年度のいじめ認知件数が61万5351件となり、20年度に比べ9万8188件(19.06%)増加したことが10月27日、文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で明らかになった。児童生徒1000人当たりの認知件数は47.7件(20年度39.7件)だった。いずれも2年ぶりの増加となった。新型コロナウイルスの感染拡大によって制限されていた学校活動が徐々に再開され、児童生徒間の接触が増えたことが背景にあるとみられる。年度末時点で解消されたいじめは49万3154件で、いじめ認知件数の80.1%だった。中学校、高校と上るにつれ、パソコンや携帯電話を使ったいじめが増えている。児童生徒の生命にかかわる重大事態の発生件数は705件。20年度(514件)より191件(37.2%)増え、小学校(314件)が初めて中学校(276件)を上回った。
いじめ認知件数は、13年にいじめ防止対策推進法が施行されて以降、いじめの積極的な認知と早期対応への理解が広がり、増加傾向をたどってきた。20年度には新型コロナウイルスの感染拡大によって学校活動が制限され、児童生徒間の接触が減ったことから減少したが、21年度には部活動や学校行事などの学校活動が再開され、いじめ認知件数も再び増加に転じた=グラフ1参照。
学校種別にみると、小学校は50万562件で過去最高となったが、その他の校種では中学校9万7937件、高校1万4157件、特別支援学校2695件となり、いずれもコロナ禍が起きる前の19年度を下回っている。
児童生徒1000人当たりの認知件数を校種別に見ると、小学校が79.9件と高く、小学生の12人に1人の割合で学校がいじめを認知している計算になる。中学校30.0件、特別支援学校18.4件、高校4.4件と続いた=グラフ2参照。
いじめの認知件数のうち、21年度末時点で解消され、日常的に観察継続中となっているものは、小学校80.4%、中学校79.1%、高校80.0%、特別支援学校80.6%だった。文科省では「いじめの積極的な認知に対する理解が広がり、いじめの認知件数が増加する一方、早期発見や早期対応ができた件数も多くなってきている」(初等中等教育局児童生徒課)と説明している。
いじめの態様別を複数回答で調べたところ、▽冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる 35万5947件(57.8%)▽軽くぶつかられたり、遊ぶふりをしてたたかれたり、蹴られたりする 14万1085件(22.9%)▽仲間はずれ、集団による無視をされる 7万3729件(12.0%)▽嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする 5万7342件(9.3%)--と続いた。
パソコンや携帯電話を使ったいじめは2万1900件(3.6%)で、前年度の1万8870件に比べて3030件増えた。このうち中学校は9783件(10.0%)で態様別3位、高校は2454件(17.3%)で同じく2位となっており、学年が上がると共に、パソコンや携帯電話を使ったいじめが多くなることが特徴となっている=表1参照。
また、いじめ防止対策推進法に基づくいじめの重大事態の発生件数は705件。20年度(514件)より191件増えた。内訳をみると、児童生徒の生命や心身に重大な被害が生じる恐れがあるとされる第1号の重大事態は349件(20年度239件)、いじめが原因で児童生徒が長期間にわたって学校を欠席している第2号の重大事態は429件(同347件)だった。
いじめの重大事態の発生件数を校種別で見ると、▽小学校 314件(20年度196件)▽中学校 276件(同230件)▽高校 112件(同84件)▽特別支援学校 3件(同4件)。同法が施行されて以来、小学校が初めて中学校を上回った=グラフ3参照。
一方、暴力行為の発生件数は、小学校の増加が目立つ。小学校、中学校、高校の合計は7万6441件。内訳は、小学校4万8138件、中学校2万4450件、高校3853件だった。小学校における暴力行為の発生件数は20年度に比べ7082件増加し、過去最多となった。中学校と高校は20年度に比べて増えたが、コロナ禍が起きる前の19年度よりも減っている。
児童生徒1000人当たりの暴力行為発生件数をみると、小学校7.7件、中学校7.5件、高校1.2件で、各校種を合計すると6.0件だった=グラフ4参照。ここでも小学校が中学校を上回るのは、今回が初めてとなる。
暴力行為の発生件数を19年度と21年度で比べると、小学校で増えた一方、中学校で減っていることについて、文科省では「小学校低学年のうちに暴力行為にしっかり対応することによって、中学校以降の暴力行為が抑えられているのではないか」(同課)とみている。