産官学の連携によって専門高校で最先端の職業人材育成を行う文科省の「マイスター・ハイスクール事業」に指定されている高校が集まり、これまでの事業の経過や今後の課題を共有する中間成果発表会が11月7日、オンラインを含め約250人の関係者が参加して行われた。学科の特色を生かして、地元企業や大学などと協働したPBL・探究学習を展開する事例や、商品開発を行い、地域の産業の活性化に貢献する取り組みなどが発表された。
2021年度にスタートした同事業は現在、全国で16校が指定を受けている。地域と産業界、専門高校が一体となり、社会に開かれた教育課程を実現していくことに加え、第三者機関が各校の取り組みについて伴走支援する体制を敷いていたり、各校の取り組みに関連する民間のエキスパート人材や研究者が産業実務家教員として学校に入ったりするなどの特徴がある。
中間成果発表会に臨んだ山梨県立農林高校では、山梨ワインの栽培から醸造、販売までを一体的に学べるカリキュラムの構築を目指す。県内のワイン醸造家などが参画し、高品質のワインを安定的に生産できる体制を築くため、原料となるブドウの品質や仕込み条件、成分値などをまとめた「テクニカルシート」を作成するなど、工程のマニュアル化を進めている。
事業内容を説明した同高の渡邊一葉教諭は「テクニカルシートは県内のワイナリーでは一般的ではなく、通常はワイナリーに所属している醸造家の経験や勘に頼っている。異動のある教職員では経験や勘を当てにはできないので、確実な製造方法の伝承技術として力を入れている。製造がうまくいかないときはテクニカルシートを見直したり、専門家にアドバイスを求めたりすることもできるし、逆にテクニカルシートのメリットを本校から県内ワイナリーに発信することもできる可能性もあると考えている」と話すなど、同高での成果を県内のワイン製造の現場に還元していくことも視野に入れている。
宇宙飛行士の野口聡一さんが国際宇宙ステーションに宇宙食として持参したことで有名になった「宇宙サバ缶」を開発した福井県立若狭高校では、これまでの取り組みをベースに、地域水産業の成長産業化に貢献できる人材育成のためのカリキュラム開発を掲げ、小中学校や福井県立大学、台湾の高校などとの連携を強化。今年度から運営・推進委員会の会議に生徒も参加するなど、生徒が主体となる活動に発展していったという。
同高の毛利誠教諭は「生徒指導から生徒支援へ教員の意識が変わってきている。生徒が中心になってスクールミッションをつくるなどの動きも出ている」と紹介し、こうした探究活動をきっかけに学校の文化や教員の考え方も変革していったことを強調した。