今年度から新学習指導要領での必履修科目「情報Ⅰ」がスタートし、2025年実施の大学入学共通テストでも新たに科目に加わる高校の情報科について、文科省は11月8日、今年度の情報科担当教員の配置に関する改善状況を公表した。共通テストへの出題などを受けて懸念されていた、情報科の免許を持たない臨時免許状・免許外教科担任による担当教員の数は796人で、前回の20年度調査から437人減少した。文科省では教員配置状況の改善が進んでいない都道府県・政令市に対して抜本的な改善計画の提出を求めており、全ての自治体が改善プランを策定。着実に実行されれば、24年度には臨時免許状・免許外教科担任による担当は解消される見込み。
情報科は03年度からの開始当初、現職の他教科の教員が一定期間の講習を受講した上で、情報科の免許を授与するなどして対応していたが、その後、大学で情報科の免許を取得した教員の採用が進まない地域があり、臨時免許状や免許外教科担任が教えているケースが他教科と比べて多く報告されていた。新学習指導要領でプログラミングなどが必修となった「情報Ⅰ」が始まり、「情報Ⅰ」を学んだ生徒が初めて受験する25年実施の共通テストから科目として追加されることから、文科省では都道府県・政令市教委に対して情報科の教員の採用・配置を促すなど、この問題の早期解消に取り組んできた。
調査は3回目で、全国の公立高校と都道府県・政令市教育委員会に対して、5月1日時点での情報科の担当教員の配置状況を調べた。
その結果、22年度に情報科を担当する教員4756人(前回調査比316人減)のうち、情報科の免許状を保有しているのは3960人(同121人増)で、臨時免許状は236人(同20人減)、免許外教科担任は560人(同417人減)だった(=グラフ①)。臨時免許状や免許外教科担任の教員のうち、8月末時点で教育委員会や教職員支援機構、大学・民間企業、情報処理学会などが主催する研修などを受講済みなのは551人、受講予定なのは245人で、臨時免許状や免許外教科担任であっても、新学習指導要領に対応した指導力の向上を図っていた。
また、情報科の免許を持っているが、情報科を担当していない教員も6088人いて、情報科の免許状を保有している教員は1万48人(同145人増)だった。
都道府県・政令市別にみると、臨時免許状・免許外教科担任が1人以上いるのは、高校が設置されていない大阪市、相模原市を除くと49都道府県・政令市で、中でも長野県と栃木県は50人を超えていた(=グラフ②)。
文科省では10月に都道府県・政令市教委に対して、情報科の教員配置状況の抜本的な改善計画の提出を求めており、各教委が提出した改善プランを踏まえ、情報科を担当する教員の数が22年度と同じ4756人と仮定すると、23年度の時点で716人の臨時免許状・免許外教科担任が解消されると推計。その段階でまだ臨時免許状・免許外教科担任が残っている▽長野▽栃木▽高知▽山梨▽和歌山▽三重▽富山――の7県についても、24年度には解消できると推計している。
具体的な解消方法としては、▽24年度以降の情報科担当教員の専科教員としての計画的・着実な採用 45都道府県・政令市▽現在情報を指導していない免許状保有者の情報科担当教員としての配置や複数校指導への参画 40都道府県・政令市▽情報教員の退職者数見込み・採用者数見込みについて、「情報Ⅱ」の開設増も視野に入れて推計 35都道府県・政令市――などがみられる。
今回の改善状況について、文科省初等中等教育局の武藤久慶学校デジタル化プロジェクトチームリーダーは「だいぶ改善したと思うが県によって取り組みにある程度差があったのは否めず、(取り組みを)加速させる必要があると認識して、抜本的な改善を年度内にやってほしいということを関係する自治体に強く申し上げて、ここまでの改善が実現できる見込みになった」と強調。引き続き文科省として、「情報Ⅰ」を履修した上での選択科目として位置付けられている「情報Ⅱ」も含めた、情報科教員の指導力向上に関する取り組みを充実させていくとした。
情報科の臨時免許状・免許外教科担任の問題に長年取り組んできた電気通信大学の中山泰一教授は「臨時免許状や免許外教科担任が解消されるのは一定の成果だが、複数の免許を持ち、情報科以外の教科も掛け持ちで教えているケースなどもまだ多いので、情報科だけを担当する専任教員の配置を増やしていく必要がある。情報科が始まったときに免許を取得した先生が、年代的に管理職になったり、退職を迎えたりする時期に来ていることも踏まえれば、情報科の教員採用を計画的に行っていくべきだ」と指摘。「情報Ⅱ」の開設に向けた意向や教員による研究会組織の有無などで依然として地域間格差がみられることから、各都道府県・政令市教委で情報科に対する施策の優先順位を上げていく必要があると呼び掛ける。