「これからの学校教育~学校と地域の視点から見る課題解決」をテーマに、第19回B&G全国教育長会議(ブルーシー・アンド・グリーンランド財団主催)が11月9日、都内で開かれ、42道府県、185自治体の教育長が参加した。広島県教育委員会の平川理恵教育長が基調講演し、同県の不登校支援における取り組みや公立高校の入学者選抜制度改革などに触れながら、「それぞれの子が本領を発揮できるような場をどれだけつくっていけるか。子どもの気持ちに立った時におかしいと思うならば変えていくことが大事だ」と改革における視点を述べた。
平川教育長は着任以来、取り組んできたこととして、県内の小学校でのイエナプラン教育の導入や学校図書館改革などを紹介。学校図書館改革については「どの自治体でも一番簡単に学校を楽しくする方法の一つ」と話し、「これをやると、子どもたちは本を読むようになる。本を読まないのは、読みたい本が学校図書館にないだけ」と強調した。また「家では寝転がって本を読むのに、なぜ学校図書館ではできないのか」と考えたことから、ゆったり過ごせるスペースもつくるようにしているといい、「それだけで学校図書館が子どもたちにとってちょっとホッとできる場になるし、教室に入りづらい子にとって第三の場所にもなる」と話した。
増え続ける不登校児童生徒への支援については、以前より取り組んでいる校内フリースクール「SSR(スペシャルサポートルーム)」の設置などに加えて、今年度からは新たに「SCHOOL“S”」という県の教育支援センターを開設。来室とオンラインによる利用ができ、併用も可能。現在、県内の小中学生140人ほどが来室利用している。平川教育長は「オンライン参加の子もおり、これまでまったく学校に来られなかった子も、確実に参加できるようになってきている」と手応えを述べた。
次に、数年前から取り組んでいる高校改革について説明。まず県内の商業高校では、3年前から「ビジネス探究」の授業を週に4時間導入している。平川教育長は県内の商業高校教員と共に米国のビジネスハイスクールの視察を行った際に、現地の生徒が生き生きと授業を受けている姿を目の当たりにし、一からカリキュラム作りに取り組んだ。この「ビジネス探究」の授業の特徴は、「生きるとは何か?」という問いから始まることで、この問いをはじめ、生徒が自分で考え、自分で学んでいくことを繰り返すことで、3年間モチベーションを高く保ったまま学べるようになり、中退者も減少するなど、変容も現れてきているという。
同様の改革を2年前からは工業高校で、1年前からは農業高校で、今年からは普通科でもスタートさせている。平川教育長は「今後は、各市町村で小中学校でも取り組んでいけたら」と展望を語った。
最後に、現中学3年生から大きく変わるという新たな公立高校入学者選抜制度について、「一番大きな変更点は、調査書を簡素化したこと。欠席欄と所見欄を廃止にし、その代わり、受験者自らが記入する『自己表現』を実施する」と説明。「これがうまくいくのかはまだ分からない。定期的にこのやり方がベストなのか、振り返りをしながら取り組んでいきたい」と話した。
参加者から「理想としている公教育の姿」について問われた平川教育長は「公教育というよりも、それぞれの子どもがいろいろなコミュニティーに出入りしながら愉快な人生を歩んでいってほしい。ただそれだけだ」と答えた。また、改革のアイデアについての質問には「とにかく現場(教室)をたくさん回って、子どもの気持ちに立って違うと思ったことを変えていくことが大事だと思っている」と述べた。