25年から加わる「情報」 旧課程も対応、得点調整対象に

25年から加わる「情報」 旧課程も対応、得点調整対象に
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 11月9日に大学入試センターが公表した2025年度実施の大学入学共通テストの問題作成の方向性では、新たに追加される「情報」の試作問題も公表された。「情報」は新教育課程の「情報Ⅰ」に対応した問題と、旧教育課程を履修していた既卒者を主な対象とした「社会と情報」と「情報の科学」に対応した経過措置問題(旧情報)の2種類があり、「情報Ⅰ」と「旧情報」の間で、いずれかの受験者数が1万人に満たない場合でも得点調整の対象とする方針。大学入試における「情報」の出題に詳しい中野由章工学院大学附属中学校・高等学校校長は、試作問題について「難易度としてはかなり易しく、授業をしっかり受け、教科書の練習問題が解ければ、対策のための準備をわざわざする必要はないだろう」とみる。

 「情報」はいずれの問題も配点は100点とし、試験時間は2日目の最後となる午後5時から開始し、60分を想定している。通常、受験者数が1万人未満の科目は得点調整の対象外となるが、高校現場や大学からの要望を踏まえ、今回については「情報Ⅰ」と「旧情報」のどちらかの受験者数が1万人を下回っても、得点調整が行われる。既卒者などの旧教育課程履修者は「旧情報」だけでなく「情報Ⅰ」も選択できるが、新教育課程履修者は「旧情報」を選択することはできない。

 今回示された試作問題のうち、「情報Ⅰ」は4つの大問で構成され、プログラミングやデータ活用など、新学習指導要領の「情報Ⅰ」で重視された内容が問われる。プログラミングが出題されている試作問題の第3問では、買い物で代金を支払う際の「上手な払い方」を考える問題解決の場面を題材に、変数の使い方や繰り返し・条件分岐による処理、算術演算や関数などの基本的なプログラミングの知識を確認し、求めるアルゴリズムについての論理的な考察を問う。

プログラミングが出題されている試作問題の大問3
プログラミングが出題されている試作問題の大問3

 データ活用を問う問題では、国の生活時間の実態に関する統計調査を基に、スマートフォンやパソコンなどの使用時間と睡眠、学習時間との関係について、箱ひげ図から分布の特徴を読み取ったり、傾向を考察したりする。データ活用の問題では、この試作問題に加えて、参考問題という位置付けでエアコンとアイスクリームの売り上げに関する時系列のデータから考察する別の問題も示された。

データ活用を問う試作問題の大問4
データ活用を問う試作問題の大問4

 一方、「旧情報」の試作問題は、必答問題に加え、「社会と情報」履修者向けと「情報の科学」履修者向けの選択問題が設けられており、一部の問題は「情報Ⅰ」と共通している。必答問題では、情報機器や情報通信ネットワーク、情報セキュリティーに関する知識を関連付け、家庭の中で使用されている情報通信ネットワークの機器の役割や接続の際の留意点を尋ねたり、サーバーの管理者の立場で外部からの攻撃にどのような情報セキュリティー対策が有効であるかを考えさせたりする。選択問題をみると、「情報の科学」履修者向けの第2問で、クレープ屋で客が注文してから商品を渡すまでの時間と客の到着間隔の記録を基に、表計算ソフトウエアで乱数を生成させてシミュレーションした結果を分析するものや、「社会と情報」履修者向けの第3問で、コンテンツ利用規約を読みながら著作権について考える問題が入った。

 「情報Ⅰ」と「旧情報」の「情報の科学」履修者向けの選択問題で用いられるプログラミング言語については、高校の授業で使用されるプログラミング言語が多岐にわたることを踏まえ、共通テスト用の独自のプログラム表記が使用される。大学入試センターの担当者は「試作問題では共通テスト用プログラム表記の例示を参考資料として付けているが、本番はこれを見て解くということではない。しかし、これを全く知らなくても本文さえ読めば当てはまる言葉が選べるようにする。共通テスト独特のプログラムについて受験生が勉強してくる必要性は、基本的にない」と説明している。

 試作問題について中野校長は「これまで『数学②』の中で出題されてきた『情報関係基礎』と比べると難易度としてはかなり易しい。新教育課程の生徒は『情報Ⅰ』の授業をしっかり受けることが大事だ。旧教育課程の受験生は、教科書を捨てないで手元に残しておいてほしい。そこにある練習問題が解ければ大丈夫だ。本番はもう少し難しくなるかもしれないが、共通テストの準備のための勉強時間をわざわざ確保する必要はないだろう」と話す。一方で「問題が易しいということは、全体的に平均点も高く、受験生の間で得点差が開きにくい可能性がある。『旧情報』の方が『情報Ⅰ』よりも易しい印象だが、得点調整の条件である20点以上の平均点差は生まれないのではないか」とも予想。試作問題の課題として「試作問題で初めて配点も示されたが、特に『情報Ⅰ』や『旧情報』で『情報の科学』を選択する場合で、学習指導要領の内容に基づいてバランスよく配点されているとは言い難い。本番ではこの点が是正されてほしい」と指摘した。

 中野校長は「初めてのことなので不安を抱いている生徒や教員も多いと思うが、そこまで身構える必要はない。試作問題を実際にみてみると、日常生活などで役に立ちそうなものが問われていると実感できると思う。単に大学入試で必要だから勉強するということではなく、これを学ぶことで自分自身にメリットがあると感じてもらえたら」とアドバイスする。

 大学入試センターでは試作問題の公表直後に、約1200人の大学生に対して、試作問題を用いたモニター調査をオンラインで実施する予定で、今後も高校関係者の意見を聞くなどして、25年の実施に向けて、問題の内容や分量、レベルなどに留意していくという。

 また、大学入試センターは高校現場に対し、25年実施の共通テストで「旧情報」を受験する可能性がある生徒に「旧情報」が出題されることを周知するとともに、各高校で開講している科目が「社会と情報」と「情報の科学」のどちらであるかを確認すること、特に専門学科の科目や学校設定科目で代替している場合は、それらの科目と「社会と情報」「情報の科学」の内容の対応関係を十分に説明することを求めている。

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