校長会や教育長会、日本PTA全国協議会など、教育関係23団体で構成される「子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会」は11月14日、東京都千代田区の参議院議員会館で全国集会を開き、少人数学級の実現や教員の処遇改善などを求めるアピールを採択した。出席した永岡桂子文科相は「教職員の方々が、安心して本業に集中できる環境作りに向けて、教育環境の充実に全力で取り組んでいく」と述べた。
採択されたアピールでは▽少人数学級の計画的な整備、教科指導の専門性を持った教員による小学校高学年の教科担任制の推進を図るための教職員定数の計画的な改善▽教員の定数改善に加え、教員業務支援員をはじめとする支援スタッフの充実、SC(スクールカウンセラー)・SSW(スクールソーシャルワーカー)の配置▽教員の処遇改善、義務教育費国庫負担制度の堅持▽学校のICT環境の整備充実▽計画的・安定的な財源確保――などを求めた。
あいさつに立った永岡文科相は「明治5年の学制発布から今年で150年となる。先人たちのたゆまぬ努力によって築き上げられてきた日本型学校教育は、子供たちの知・徳・体を一体で育むものとして、諸外国からの非常に高い評価を受けている。他方、グローバル化や少子化の進展など、学校教育を取り巻く環境は大きく変化をし、また新型コロナウイルス感染症の影響もある中で、学校の持つ福祉的機能や教師の存在意義、また対面で実体験を通して学ぶことの価値が、再認識をされつつある」とあいさつした。
その上で「全ての子供たちの可能性を最大限に引き出す、令和の日本型学校教育の具体化、そしてその直接の担い手である教職員の方々が、安心して本業に集中できる環境作りに向けて、文科省としても学校における働き方改革の推進や教職員定数の改善、支援スタッフの配置拡充、GIGAスクール構想の推進など、教育環境の充実に全力で取り組んでいく。新時代の日本を築いていくのは子供たちだ」と語った。
日本PTA全国協議会の金田淳会長は、アピールの採択に当たって「政府および関係国会議員に対し、中学校、高校、特別支援学校も含めたあらゆる学校の教育環境の改善を実現することや、教育関係予算の計画的・安定的な財源確保を要請する活動に入っていく。子供たちに安心・安全な教育環境のもと、明るい未来を夢見てほしいという願いを、私たちも国も責務として果たしていくことが重要。人と人とが学び合い、育て合う学校という現場において、その教育の直接の担い手である教職員の皆さまの意欲と情熱を、しっかりと支えていかなくてはならない」と強調した。
次代を担う子供たちの健やかな成長は、すべての大人たちの願いです。子供たちが全国どこに生まれ、どんな家庭環境で育ったとしても、等しく良質な学校教育を受けられるようにすることは、私たち大人、そして国の責務です。
すべての子供たちの学びを保障するためには、学校の指導・運営体制の充実やICT教育環境の整備等、新しい時代の学びの環境整備を進めることが不可欠であり、小・中学校のみならず、高等学校、特別支援学校等のあらゆる学校の教育環境の改善を実現し、より一層の良質な教育を子供たちに約束することが、私たち教育に携わる者の責務であります。
とりわけ、長時間勤務の実態やいわゆる「教員不足」の発生、採用倍率の低下など、教員を取り巻く環境は厳しい状況にあり、持続可能な学校の指導・運営体制の構築に向け、学校における働き方改革の推進をはじめとした教員を支える環境整備により、教職の魅力を向上させ、教員に優れた人材を確保することは急務となっています。
以上のことを踏まえ、私たちは日本のすべての人々に、次の事項の実現を強くアピールします。
一、ICTの効果的な活用を含むきめ細かな指導の充実、個別最適な学びと協働的な学びの実現及び次なる感染症等の緊急時においても、すべての子供たちの学びを保障するため、中学校・高等学校も含めた少人数学級の計画的な整備を図るとともに、教科指導の専門性を持った教員による小学校高学年の教科担任制の推進を図るための教職員定数の計画的な改善を行うこと
一、教員が教員でなければできないことに全力投球できる環境の整備に向け、右の定数改善に加え、教員業務支援員をはじめとする支援スタッフを充実すること。また、いじめ、不登校などの深刻な状況を踏まえ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置やSNS等を活用した相談事業など教育相談体制を充実すること。
一、意欲と情熱をもって教育に取り組む優れた教職員を確保するため、人材確保法の趣旨や今年度実施している勤務実態調査の結果等を踏まえた教員の処遇改善に努めるとともに、教育の機会均等とその水準の維持向上を図るため、その根幹となる義務教育費国庫負担制度を堅持すること。また、地方財政を圧迫し、人材確保に支障を生じたり、地域間格差が生じたりすることのないよう、義務教育費国庫負担金及び地方交付税の財源確保を行うこと。
一、一人一台端末環境における本格的な教育活動が全国の学校で展開される中、すべての子供たちの学びを保障し、より一層質の高い教育活動を実現するため、運用面への支援も含めた学校のICT環境の整備充実を進めること。
一、教育投資は未来の日本への先行投資であり、国の最重要事項であることから、右に掲げる諸方策の実現にあたっては、既存の教育予算の削減や付け替え等によるのではなく、計画的・安定的な財源確保を行うこと。
2022(令和4)年11月14日
子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会
日本PTA全国協議会、日本教育会、全国市町村教育委員会連合会、全国都市教育長協議会、中核市教育長会、全国町村教育長会、全国連合小学校長会、全日本中学校長会、全国公立小・中学校女性校長会、全国特別支援学校長会、全国連合退職校長会、全国高等学校長協会、全国公立学校教頭会、全国特別支援教育推進連盟、全国へき地教育研究連盟、日本連合教育会、全国養護教諭連絡協議会、全国公立小中学校事務職員研究会、全国学校栄養士協議会、日本教職員組合、全日本教職員連盟、日本高等学校教職員組合、全国教育管理職員団体協議会