幼児期はインクルーシブ教育の絶好の時期 有識者懇談会

幼児期はインクルーシブ教育の絶好の時期 有識者懇談会
オンラインを交えて行われた「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会
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 内閣官房こども家庭庁設立準備室は11月15日、「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会の第4回を、オンラインを交えて開き、有識者へのヒアリングを行った。明和政子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)は脳科学の視点から産前、乳児期、幼児期の各時期において特に優先して取り組むべきことについて報告し、「前頭前野が発達する幼児期は、インクルーシブ教育をより効果的に行う絶好の時期だ」と指摘した。

 明和委員は「環境の影響を特に強く受けて脳が可塑的に変化する特別の時期がある。その時期の一つが乳幼児期で、その後の脳と心の発達に直接的に影響する」と、就学前の子どもたちの環境や経験の重要性について強調した。

 各時期において特に優先して取り組むべきことについては、産前には親として必要な脳と心「親性」を育むことが重要だとし、「親性に生物学的性差はない。親になる前の思春期から男女問わず親性教育を始める必要がある」と述べた。また、乳児期は生涯にわたる身体、脳、心の土台をつくる重要期とし、「特定の誰か」とのアタッチメント形成が必要だとした。「それは、母親や血縁者である必要はないことが研究でも明らかになっている。発達初期のアタッチメント形成の剥奪は、後の思春期における社会性や対人関係の発達や、脳発達に影響する」と説明した。

 さらに、幼児期は脳の「前頭前野」の顕著な発達期であり、発達格差を生まない保育や教育の保障が重要だとした。明和委員は「前頭前野が発達するこの幼児期は、差別的な意識がより顕在化する。ただ、同時に教育の効果が大きく出る時期でもある。多様性をしっかりと子どもたちの環境の中に入れ込み、インクルーシブ教育をより効果的に行う絶好の時期でもある」と話した。

 国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長は、健康の側面から子どもの育ちについて報告。米国では乳幼児期の健診だけでなく、3歳から21歳まで年1回のかかりつけ医による健診が義務化されていることに触れ、「米国の健診では生活習慣や親子関係、学校生活など、子どもを取り巻く環境を聴取し、心身の健康に影響を与えるリスクがないかを評価し、その上で助言や指導を行っている」と紹介。日本においても身体的健康を目指すことはもちろん、全ての子どもと家族を心理・社会的に捉え、支援するシステムの充実が必要だと訴えた。

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