文科省の「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」は11月17日、第5回会合をオンラインで開いた。9月に国連・障害者権利委員会の勧告が出されたのを踏まえて、検討すべきことについて意見を出し合い、委員からは「今一度、インクルーシブ教育の意味やその理想の形について考えるべきではないか」「教員の専門性をどう担保していくかは非常に重要であり、教員養成段階においてもっと特別支援教育を充実すべき」など、さまざまな意見が出された。
国連の障害者権利委は9月9日、日本政府に対してインクルーシブ教育に向けた行動計画の策定を求めるなどの勧告を出した。それを踏まえ、氏間和仁委員(広島大学大学院人間社会科学研究科准教授)は、諸外国の事例も挙げながら、「全ての障害の種類、程度の子どもが通常の学級で教育を受けることの効果については疑わしい点がある」とし、「通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校の担当教員の専門性の担保、質の保障は避けて通れない」と指摘した。
それに対し、竹内哲哉委員(日本放送協会解説委員室解説委員)は「今回の国連勧告において考えたことは、果たして私たちはインクルーシブ教育について理解ができているのかということ。障害のある人とない人を分けて教育することは、社会の分離につながるのではないか。そうしたことを考えるための勧告だったのではないかと思っている」と考えを述べた。
続けて平野真理子委員(平野卓球センター監督)も「私も竹内委員と同様のことをずっと考えてきた。インクルーシブ教育の意味や、目指す理想の形というのは何なのだろうか。これまでの日本の教育の歴史を考えると簡単にはいかないかもしれないが、みんなが一緒に過ごす時間を学校教育の中で確保することが重要ではないか。将来の社会の縮図が学校であってほしいというのが私自身の願いだ。今のインクルーシブ教育の進んでいる方向は、通常学級、通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校をどう連携させていくかということになっていて、これを理想とするならば、社会に出たときの壁は取っ払えないのではないか」と疑問を呈した。
梅田真理委員(宮城学院女子大学教育学部教授)は、教員の専門性を担保していく重要性について指摘。「通常の学級の中にも多様な困り感のある子どもたちがいる。例えば希少障害のある子のように、特化した指導方法が必要な子もいる。今後はもっと特別支援教育について学んだ教員が現場に出ていく必要がある。そうした教員が特別支援学級や通級だけでなく、通常の学級ももつことで、通常学級でも特別支援教育の知識が必要だと発信していくことが重要」と述べ、「特別支援教育を学んでいかないと学級経営は難しいということを理解してもらうためにも、もっと教員養成の段階で、特別支援教育についてしっかり学べるようにするべきだ」と訴えた。
野口晃菜委員(一般社団法人UNIVA理事)は「今後のインクルーシブ教育のビジョンを明確にする必要はある。特別支援教育の枠組みのみでなく、義務教育全体としてインクルーシブ教育をどう捉えていくのかということを、ステークホルダーが合意形成していくプロセスが重要ではないか」と述べた。