先進的なICT教育を推進する全国130自治体の首長でつくる「全国ICT教育首長協議会」は11月17日、全国ICT教育首長サミットを開き、各地の首長・教育長が「未来を担う子供のためにNEXT GIGAを考える」をテーマに、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を活用した先進事例を紹介した。同時に第5回日本ICT教育アワードが発表され、東京都渋谷区、富山県氷見市、奈良県生駒市などが受賞した。
今回のサミットには、全国の首長、教育長、教育委員会関係者など約200人が参加した。登壇した文科省の簗和生副大臣は「GIGAスクール構想は環境整備から、利活用を推進する段階に着実に移行しており、今後はその利活用の差によって学習に差が生じることがないように、優れた取り組みを全国的に展開し、強化していくことが重要」と語った。
日本ICT教育アワードには、過去最高の79自治体からの応募があり、9つの自治体が受賞した。その中で文部科学大臣賞を受賞した東京都渋谷区は、区長部局のICT部門と連携し、異なる発生源の教育データを集約したダッシュボードを構築して、課題のある子供を発見するなどの取り組みが評価された。
同協議会は「学校の授業などでのICT活用が日常的になったことを踏まえ、そこから出てくる教育データの利活用に先行して着手し、全国をリードする研究の成果が蓄積されだしている。また区長自らが住民に対し、積極的にICT教育の意義を説明している」と評価。同区の長谷部健区長は「教育データを活用することにより、子供たちをもっと理解できるようになり、子供たちがもっと学校で楽しく過ごすことができるのではないかと考えている」と語った。
また総務大臣賞を受賞した富山県氷見市は、首長のリーダーシップによるICT教育予算の獲得、小規模校同士や地域住民との遠隔合同授業などが評価された。同市の林正之市長は、2~3校の小規模校がICTとスクールバスを利用してハイブリッド型の交流を行っていることを紹介し、「小規模校ならではの良さを生かし、こうした交流を行っていくことが、地域に学校を残す上での一つの方策となる」と語った。
さらに奈良県生駒市は、民間で活躍する人材の活用や教員からのボトムアップがしやすい体制づくりが評価され、経済産業大臣賞を受賞した。同市の小紫雅史市長は「外部のプロ人材が、学校現場での校長や教員の困りごとや取り組みたいことを丁寧にくんで、プログラムを作っている」と紹介した。
2022年度の全国学力・学習状況調査の結果によれば、1人1台端末を授業で「ほぼ毎日」活用している小学校の割合は55.4%となっている。ただ都道府県別に見ると、8割近い自治体がある一方、2~3割台の自治体もあるなど、地域により活用に差があることが課題となっている。今回のサミットに参加した文科省の武藤久慶・学校デジタル化プロジェクトチームリーダーは「先進自治体の中でも、学校間・学年間・学級間格差はある」と語り、国の支援措置の積極的な活用を呼び掛けた。