【特報】どうする給特法 萩生田氏「給特法の『精神』は必要」

【特報】どうする給特法 萩生田氏「給特法の『精神』は必要」
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 自民党が11月16日に初会合を開いた「令和の教育人材確保に関する特命委員会」で委員長を務める萩生田光一政調会長が17日、教育新聞の単独インタビューに応じ、特命委の狙いと給特法に対する考え方を語った。萩生田氏は、1971年に制定された給特法が「今の教員の働き方に見合うフィーを払っているとはとても思っていない」と述べる一方で、人材確保法により教員の給与を一般の公務員より優遇している経緯を踏まえ、「給特法の見直しは必要だが、給特法の『精神』は残す必要があるのではないか。崇高な仕事であるというプライドはなんとかうまく残して、良い制度が作れないかと思っている」との考えを語った。また特命委では、教員志望者を増やすための議論を進める意向を示し、教員志望者の進路選択などに関する実態を把握した上で、「給与、働き方を含めて制度をしっかり作りたい」と述べた。

最大の狙いは「教員の志願者数を増やす」

「6月の骨太の方針にしっかり書き込むために、今から議論をしていく」と語る萩生田氏
「6月の骨太の方針にしっかり書き込むために、今から議論をしていく」と語る萩生田氏

 現在、文科省では給特法の見直しを視野に入れた勤務実態調査が進められている。このタイミングで特命委を立ち上げた理由について、萩生田氏は「(調査結果の)速報値が来年4月には出てくると期待している。それを受けて、6月の骨太の方針にしっかり書き込むために、今から議論をして、その(議論の)出口と調査の結果をよく俯瞰をして、そこにさらなる政策を乗せるというスケジュール感を逆算すると、この時期からスタートして、4~5月ごろに基本の方向性を取りまとめ、党として抜本的な改革案を提案したいと考えている」と説明した。

 また、特命委で最重要視している検討項目としては、「教員の志願者数を増やしていきたい。若い人の中で今、教員は大変な職業だということが広がってしまっていて、本当は第一志望としては教員になりたかったのに、民間に流れてしまっている人たちがいる。最初の志をしっかり支え、背中を押していくため、給与、働き方を含めて、制度をしっかり作りたいと思っている」と述べた。

 その上で「教員免許を持っているのに、教員にならない人はどのくらいいるのか、辞めてしまう人たちがどのような年齢層で、どのくらいいるのか、その理由は何なのか。(2019年に)給特法を改正した後に、少し(時間外勤務が)抑えられているのか、法律はできたが実際には持ち帰りの仕事が増え、グレーな部分があるのではないか――といったこともちゃんと見て、働き方の応援をしていきたいと思っている」と、問題意識を語った。一方で「教育関連人材を十分に育成できていない大学もあり、そこにはメスを入れたいと思っている」とも強調した。

「崇高な仕事」のプライドを残した制度を

 さらに給特法の見直しに向けた議論については、「昭和の時代に作った給特法で、今の教員の働き方に見合うフィーを払っているとはとても思っていない。従って、この部分の改善も必要だと思っている。あるいは給特法という制度が、ボリュームさえ変えれば解決するのか、というのは幅広に議論したい」との考えを述べた。

 合わせて、教員という仕事の専門性・特殊性について、「人材確保法によって、(教員は)一般の公務員ではないという位置付けをされている。このプライドは(仕事が)大変でも、先生たちにはぜひ持っていてほしいと思う。それに見合うためにどういう働き方や、どういう給与体系が必要なのかを、(特命委の)出口で相談して、政府に提案したい。教員の働き方は、時間でなかなか評価しづらいところがある。(特命委の初会合でのあいさつで、教職を)崇高な仕事と言ったが、そういう仕事に携わる人は、時間で給与が決まる労働者とは意味がまた違う。そのプライドはなんとかうまく残して、良い制度が作れないかと思っている」と語った。

教職調整額の設定に込められた「精神」について説明する萩生田氏
教職調整額の設定に込められた「精神」について説明する萩生田氏

 「例えば自己啓発のために、新聞を読む、専門書を読む。これは教員がスキルアップしていくためには必要な作業だが、仕事かといわれると非常に難しい。明日の授業のために、参考となる文献を読みたい場合はどうか。私は仕事だと思っていいと思うが、一般納税者の人たちが、この読書の時間の費用を残業代として認めるかどうかは、社会的な議論になると思う。そういうところを包含したのが、(給特法の)4%という調整額の精神だった。だからといって、この4%を全員一律に膨らませるだけでは、頑張っている先生がやる気をなくしてしまう。このメリハリをどう付けていくかは、今回、われわれ(特命委)が議論していく重要なテーマだと思う。給特法の見直しは必要だが、給特法の『精神』は残す必要があるのではないか」と、今後の議論の方向性を語った。

特命委で「本気で出口を作る」

 萩生田氏によれば、16日の初会合では「小学校、中学校の教員免許を一元化して、どちらの学校でも教壇に立てるような免許に変える必要があるのではないか」といった議論が出たという。萩生田氏はまた、「スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとは別に、教員免許の取得と並行して短期間で資格が得られるような、児童生徒への心理的な対応に特化した専門職があってもよいのではないか。また、これまでのように4年間(大学で)勉強して、22歳ですぐに教壇に立つよりも、例えば英語の先生になる人は1年間、海外で英語を勉強してもらうといったことがあっても、よいのではないか」と提案した。

 初会合でのあいさつで「教員はわが国の未来を開く、子供たちを育てるという崇高な使命を有するかけがえのない職業であり、そのような認識を社会全体で共有することが重要」と語った意味を尋ねると、「かつて、学校の先生はどこの地域でも尊敬される存在だったし、今もそういう存在であってほしいと願っている。志がある先生は、余裕さえあれば必ずそうなれると思う。(大変な仕事だとされている現状から)一段、(地位を)上げていきたい」と答えた。

 萩生田氏は最後に、学校現場の教員に対し、「特命委では元文科相の私が先頭に立ち、本気で出口を作る。だから、教員の皆さんには前向きに頑張ってほしい。われわれはしっかり見ているので、大事な仕事をしているというプライドを忘れないで、子供たちと向き合ってほしい。日本の将来を作っている職業なのだから」と呼び掛けた。

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