児童館の在り方を検討している厚労省社会保障審議会放課後児童対策に関する専門委員会のワーキンググループ(WG)は11月22日、第3回会合をオンラインで開き、WGとしての報告書の「とりまとめ案」について大筋で了承した。「とりまとめ案」では、中学生や高校生も利用しやすいような取り組みを強化していくことや、ソーシャルワーク機能を発揮するための福祉系専門職の配置を提言。こども家庭庁に引き継がれた後も、児童館の制度的な見直しや社会教育施設などの子どもが利用する施設の在り方を議論していくべきだとした。
来年4月に創設されるこども家庭庁では、発足後に「こどもの居場所づくり指針(仮称)」を策定する予定で、児童館に関連する施策もこの指針の中に改めて位置付けられることになる。WGではこうした動きを見据えて、児童館が果たすべき機能や役割などについて整理を行った。
「とりまとめ案」では、前回会合で示された①子どもの居場所としての児童館機能・役割の強化②ソーシャルワークを含めた福祉的課題への対応強化③大型児童館を中心とした、地域における児童館全体の機能強化――の3つの柱で今後の児童館の在り方を整理。
①では、児童館が本来、18歳未満の全ての子どもを対象としているにもかかわらず、中学生や高校生世代の利用が少ないという課題に対し、SNSを活用した相談支援、交流の場の提供やWi-Fi環境の整備、夜間も含めた開館時間の柔軟化を挙げ、虐待や貧困などの事情を抱えた子どもへの支援や居場所、障害のある子どもや外国につながる子どもも過ごせるようなインクルーシブな環境づくりを求めるとともに、子どもの権利に基づき、運営に関して子どもが意見を表明できる機会をこれまで同様に重視し、そのノウハウを地域に広げていく必要があるとした。
②では、児童館に求められるソーシャルワーク機能は、地域を基盤とした「コミュニティソーシャルワーク」にあるとし、ソーシャルワーク機能を実効的なものにするためには、福祉系専門職の配置が期待されるとした。その上で、児童館職員に求められるソーシャルワークを展開する基盤として位置付けるべきは「遊び」であると強調。遊びを通じて表現されるさまざまな子ども・家庭の課題を見つけ、その課題が深刻化する前に関係機関につなげていく必要があるとした。
また、改正児童福祉法を踏まえ、就学前・就園前の子育て中の保護者や妊婦に寄り添った支援、子どもの就学後も保護者との関係性を維持し続ける視点も取り入れられた。
③では、全国に18館ある大型児童館が地域の拠点となり、他の児童館や子どもの居場所とネットワークを形成しながら、情報発信や人材育成などの中間支援機能を担うことや、広域災害時の子ども支援、遊びのプログラムの普及といった役割が期待されるとした。
これらの提言に加え、「とりまとめ案」では児童館が現行法令で規定されている機能以上に多くの役割が期待されていると指摘。さらなる制度の見直しや機能・役割ごとの児童館の類型化などを継続して検討していく必要があるとし、こども家庭庁に引き継がれていく中で、社会教育施設などを含む子どもが利用する施設全般の在り方も含めた議論に期待するとした。
この日の会合では、「とりまとめ案」の文言などについて検討を行い、修正については座長の大竹智立正大学社会福祉学部教授に一任することで合意。これまでの議論を振り返り、大竹教授は「子どもたちを取り巻く環境が大きく変わる中で、つらい思いをしている、生きづらさを感じている子どもたちが出てきている。子どもの権利条約がつくられ、児童福祉法の改正の中に入り、こども基本法がつくられ、制度的にも大きく子ども中心に変わってきた。そうした中にあって、まさにこの児童館が、これまで(戦後)七十数年、日の目を見てこなくても実践を粛々とやってきた。そして社会の中で求められる機能を児童館が担ってきた。しかし一方で、それが限界に来てもいる」と指摘。「児童館が地域の中で必要不可欠な施設であることを改めて社会に問うていきたい。職員がプライドを持てる職場となるような支援が、私たちの議論を通してサポートできたらいいと思っている」と、社会的に児童館が再評価されることに期待を込めた。
WGの「とりまとめ」は、12月21日に開かれる放課後児童対策に関する専門委員会の第14回会合で報告される予定。