宮城教育大学附属小学校でこのほど、同校の新教科コンピュータ・サイエンス科(CS科)に関する公開研究会が行われ、京都精華大学の鹿野利春教授が「これからの時代に求められる情報活用能力~小学校で考えたいこと~」をテーマに講演した。鹿野教授は「小学校においても、例えばAIの特性やネットワークの仕組みなど、コンピューターの仕組みや情報の科学的な理解を入れていくべきだ」と話した。
鹿野教授はSociety5.0で求められる人材として、「定型業務の多くはAIやロボットに代替可能になる。自ら課題を見つけ、AIなどを活用してそれを解決できる人材が必要となる」と話し、「子どもたちに情報化やグローバル化など急激な社会的変化の中でも、未来の創り手となるために必要な資質・能力を確実に備えることのできる学校教育を実現すべきだ」と強調した。
小学校の学習指導要領における情報活用能力について、「仕組みや原理、社会への影響の理解というところが薄い。例えばAIの特性や、ネットワークの仕組みについても学んでいない。それらがたとえ学習指導要領に書いていなくても、子どもたちの安全を考えると取り入れるべきではないか」と指摘した。
さらに鹿野教授は「中学校に入ると、2進数など、いきなり科学的な理解が入ってくる。小学校で学ぶことと、中学校で学ぶことのギャップに子どもたちが耐えられないかもしれない。もう少し小学校と中学校の内容がつながるようなところがあった方がいいのではないか」と話した。
中学校と高校での現状の課題については、中学校ではカリキュラム・マネジメントの必要性を、高校では学習内容の充実や高度化を挙げた。また、小中高全体として情報活用能力の授業時間の確保や、教員研修・教材の充実、課外活動の活性化が必要だとした。
鹿野教授は「トライ&エラーが短い時間で繰り返しできるのが、デジタルの利点。それを踏まえた上で授業設計していくと、子どもたちは『学び方』を学べるのではないか」と締めくくった。
同校では2019年度から新教科CS科をスタート。プログラミングの体験にとどまるのではなく、コンピューターそのものやデジタル化された情報を学びの対象とし、体験的・探究的な活動を通して確かな情報活用能力を系統的に育んでいくことと、コンピューターとの適切な関わり方を身に付けていくことを目標として研究が進められている。