CBT化でどのようなメリットがあるのか 国研がシンポジウム

CBT化でどのようなメリットがあるのか 国研がシンポジウム
CBT化に向け、これからの学力アセスメントについて意見が交わされた
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 国立教育政策研究所(国研)は11月30日、「学力アセスメントの動向と展望~CBT化に向けて~」をテーマに、今年度の教育研究公開シンポジウムをオンラインで開催した。講演ではOECD教育スキル局シニアアナリストの池田京氏が、CBT化の観点からみたPISAの進化について報告。また、パネルディスカッションでは埼玉県学力・学習状況調査の状況や、国研の「学力アセスメントの在り方に関する調査研究」で得られた知見を踏まえながら、CBT化に向けたこれからの学力アセスメントについて考えた。

 PISAでは、2015年調査で筆記型調査(PBA)からコンピューター使用型調査へと切り替わっている。コンピューター使用型調査のメリットについて池田氏は「例えばインターネットを利用した週当たりの時間数など、現在の実生活の文脈で生徒のコンピテンシーを測定することができる。また、問題への反応時間やプロセスデータなどの新情報を収集することができる」といったことを挙げた。

 一方、課題としては、経年変化の測定においてPBAとコンピューター使用型調査では項目の難易度が変わる可能性があることや、学校や国によるコンピューター性能の違いがあることなどを挙げた。こうした課題を解消するために、PISAでは学校のコンピューターのハードウエアとソフトウエアの設定が最低要件を満たしているかどうかをチェックするシステム診断アプリケーションを提供するなど、対応策についても報告した。

 パネルディスカッションでは、埼玉県教育局市町村支援部義務教育指導課長の渡辺洋平氏が埼玉県学力・学習状況調査について報告。同調査は15年度から実施しており、その特徴について渡辺氏は「学力のレベルを36段階で表し、その伸びが分かるようになっている。この調査データによって、学力を良く伸ばしている学校が分かるため、学力を伸ばした取り組みや指導方法を県内に共有することができている。いわゆる教師の肌感覚ではなく、データに基づく学校・教員の授業改善PDCAサイクルの確立ができている」と述べた。

 また、昨年度からは同調査のCBT化に向けて検証を進めており、来年度はさいたま市を除く県内の市町村がCBTか紙による調査を選択して実施する予定で、CBTを36市町村、約12万人が、紙による調査を26市町村、約17万人が受ける予定。24年度からは県立学校および県内全ての市町村において、CBTでの実施を目指すとしている。

 続いて、岩手大学の佐藤寿仁准教授は、これまでの全国学力・学習状況調査を振り返りながらCBT化について考えを述べ、「CBTによる全国調査になることで、調査実施、結果分析における一連のプロセスが短縮するのか、問えなかったことが問えるようになるのか、正答率などの結果だけでなく、学習者の思考過程が分かるのか、といったことを今一度考えなければいけない。そのためにはどのような調査の枠組みが必要なのか、用いる統計的手法のメリット、デメリットを確認すべきではないか」と指摘した。

 こうした報告をもとに、池田氏は「全国学力・学習状況調査の問題をつくる側は、その問題でどういう能力を測ろうとしているのか、もっと見えるようにするべきではないか。例えば、どういうつまずきをした子は、どういう能力が欠けているのかといったことをクリアにしていくことで、教員も日々の実践により活用しやすくなる」と提案した。

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