南アの人種差別を知る 現地で教える大学生と白百合小が交流授業

南アの人種差別を知る 現地で教える大学生と白百合小が交流授業
岡村さんの話に驚きながらも真剣に耳を傾ける6年生
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 わずか10歳の子が、自分が黒人に生まれてきたことを後悔している――。東京都の白百合学園小学校(保倉啓子校長、児童704人)では、オンラインを活用した国際交流授業に取り組んでいる。このほど、6年生全3クラスが、南アフリカの学校でボランティアとして教員をしている大学生の岡村奈々さんとオンラインでつながり、同国の実状について話しを聞いた。白人と黒人では通う学校が違うなど、岡村さんの口から語られる同国の人種差別に関する数々のエピソードに、子どもたちは驚きを隠せない様子だったが、「南アフリカの子たちとオンラインでつながって教え合う」「身近で人種差別を受けている人を取材して、表などにまとめて世界に発信する」など、自分たちにできるアクションプランを考えた。

白人と黒人では通う学校が違う

 同小の6年生は、昨年から総合的な学習の時間などにおいて、コロンビアやミャンマー、ヨルダン、オランダ、米国、カンボジアなど、各国の日本人学校の教員や現地に住む日本人とオンラインでつながり、その国のことを学んだり、児童と交流したりするなどしてきた。こうした活動について同校の浜屋陽子教諭は「コロナ禍に突入してから海外に実際に行くことは難しくなったが、その一方、オンラインで気軽に世界の人とつながれるようになった」と振り返り、「世界のことを知ったのをきっかけにSDGsについても考えてきたが、今回の南アフリカとの交流では、今後どのように自分が関わっていきたいか、具体的なアクションにつなげていきたい」と話す。

 岡村さんは「アフリカで教員をしたい」という夢をかなえるため、武蔵野大学教育学部を1年間休学し、4月から南アフリカに渡った。その後、ガーナでも教員をし、現在は再び南アフリカの学校に戻っている。SNSで岡村さんの活動を知った浜屋教諭が今回のオンライン国際交流を依頼し、実現した。

 「実は今日、いきなり公共バスがストライキに入って、学校も休みになってしまいました。だから私は今、学校の外の安全な場所からみんなとオンラインをつないでいます」

 冒頭、岡村さんがこう伝えると、子どもたちはいきなり公共の乗り物や学校が休みになってしまうことはもちろん、「安全な場所」という言葉に驚きを隠せなかった。岡村さんが「南アフリカ共和国は危険地域も多く、外を歩いているだけで危ないところもある」と説明すると、子どもたちは自分たちが住む日本との違いを実感したようだった。

 続いて、岡村さんは同国の学校について、「まずこの国では、白人と黒人では通う学校が違う」と説明。白人は公立学校に通い、施設も整っているが、黒人が通うのは私立というよりも個人が経営するような学校で、施設が整っていないところがほとんどだという。岡村さんは黒人の子どもたちが通う学校に勤めており、そこでは3歳から14歳ぐらいまでの約120人の子どもたちが学んでいる。120人に対して教員は岡村さんを含めて5人、教室はたった4つ、トイレに限っては2つしかない。「休み時間はトイレに長蛇の列ができる」との話しには驚きの声が上がった。

10歳の子が黒人に生まれたことを後悔している

 岡村さんは少し前に風邪をひいてしまい、数日間、学校を休んだそうだ。風邪が治って学校に行くと、子どもたちがうれしそうに駆け寄ってきてくれた。しかし、そこで子どもたちから掛けられた言葉に、岡村さんは大きな衝撃を受ける。

 「奈々が風邪をひいてしまったのは、私たち黒人がうつしちゃったのかな……」

黒人の子どもたちが通う学校で教える岡村さん
黒人の子どもたちが通う学校で教える岡村さん

 まだ幼さの残る10歳の子どもたちが、黒人に生まれたことを「良くないこと」だと思ってしまっていることに言葉を失ったそうだ。こうしたエピソードを語りながら、岡村さんは「明日があること、学校で勉強ができること、救える命が救えること、人種差別がないこと……。日本では当たり前でも、南アフリカではどれも当たり前じゃない。今はニュースやインターネットでその場にいなくてもなんでも見られるし、情報を得ることができる。でも、実際に来てみないと分からないことやものがたくさんある。自分の目で確かめることを大事にしてほしい」と訴え掛けた。

 岡村さんから語られる現実に大きく心が揺さぶられた6年生は、時間の限り質問を投げ掛けた。ある児童は「学校の授業で一番役に立ったことは何か?」と質問。岡村さんは少し考えて、「日本のことも他の国の子のことも知ることができた『社会』かな。でも、この学校には算数と国語と理科と宗教の4つの教科しかない。この子たちは他の国のことはもちろん、自分の国のことさえもよく知らない」と答えた。

 また、他の児童は「南アフリカにいったからこそ分かる人種差別は?」と質問。岡村さんは「白人と黒人で行くお店も違うし、食べるものも違うし、住んでいるエリアも違う。生きている世界が違う感じで、差別というよりも、真っ二つに割れているよう」と説明していた。

 授業後、6年生からは「岡村さんの話を聞く前から、南アフリカには差別があると知っていたが、現実はもっとひどいと感じた」「自分が黒人に生まれてきたことを後悔していることに一番ショックを受けた。あなたが生まれてきたことは奇跡なんだよと伝えたい」といった率直な感想が語られた。浜屋教諭は「自分たちにとって少し遠いと感じていた人種差別を、岡村さんから話を聞くことで、子どもたちは自分事として捉えて考えられたのではないか」と手応えを述べた。

 6年生はこの授業から約1週間かけて、それぞれの家族とも話をしながら、自分たちが南アフリカの子どもたちにできる具体的なアクションを考えた。寄付などの他にも「インターネット上で南アフリカについて知ってもらう機会をつくる」「身近で人種差別を受けている人を取材して、表などにまとめて世界に発信する」「定期的に交流を続ける」「他の学年の子たちにもこのことを知ってもらうためにプレゼンする」「南アフリカの子たちとオンラインでつないで教え合う」といったアイデアが出てきており、同校では今後、いくつかのアイデアを具体的に取り組んでいくとしている。

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