次期教育振興基本計画(2023~27年度)の策定作業を進めている中教審部会は12月12日、第11回会合をオンラインで開き、審議経過報告の素案についての議論を続けた。今回は「確かな学力の育成」など16の目標の上に、総括的な基本方針として「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」の2つを掲げた。これまで委員から「子供だけでなく教師のウェルビーイングも重要」と指摘されていたことについても、新たに加えられた各目標の趣旨説明で補強された。
目標12「指導体制・ICT環境の整備、教育研究基盤の強化」では、「教師の養成、採用、研修の充実や、魅力ある優れた教師の確保・資質能力の向上を進めるとともに、学校における働き方改革、ICTの活用、学校の指導・事務体制の強化、支援スタッフとの連携・分担体制の構築等を通じて、教師が教師でなければできないことに注力できる体制を整備し、教職の魅力向上、教師のウェルビーイングの向上を目指す」と明記された。合わせて指標候補として、働き方改革の取り組み状況などに加えて「1人1台端末環境を円滑に運営するための十分なサポート体制が構築されている自治体の割合の増加」などが追記された。
これに対し、清原慶子副部会長(杏林大学客員教授、ルーテル学院大学客員教授、前東京都三鷹市長)は『学習者のウェルビーイングが向上する基盤として、労働環境が良いということが大事であり、そのことが家庭や地域のウェルビーイングにもつながる、さらには生涯学習・社会教育を通じて、地域コミュニティーの基盤としてウェルビーイングが実現していくことが大切であると補強・明記されたことは、極めて重要だ」と評価した。
今回の素案では他にも、日本社会に根差したウェルビーイングの要素として、「幸福感」に加え「学校や地域でのつながり」「協調性」「利他性」「多様性への理解」「サポートを受けられる環境」「社会貢献意識」「自己肯定感」「自己実現」「心身の健康」などが追記された。
また関連する目標2「豊かな心の育成」では「地域や社会をよくするために何かしてみたいと思う児童生徒の割合の増加」「自分と違う意見について考えるのは楽しいと思う児童生徒の割合の増加」「先生は自分のいいところを認めてくれると思う児童生徒の割合の増加」などの指標候補が加わった。
他にも、目標4「グローバル人材の育成」では「英語力について、中学校卒業段階でCEFRのA1レベル相当以上、高等学校卒業段階でCEFRのA2レベル相当以上を達成した中高生の割合の増加(5年後目標値:6割以上)」「全ての都道府県・政令指定都市において、中学校卒業段階でCEFRのA1レベル相当以上、高等学校卒業段階でCEFRのA2レベル相当以上を達成した中高生の割合を5年後までに5割以上にすることを目指す」などの指標候補が追記された。
さらに目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」では、指標候補として「不登校特例校の設置数の増加(5年後目標値:全都道府県・指定都市への設置)」「夜間中学の設置数の増加(5年後目標値:全都道府県・指定都市への設置)」が加わった。