新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界各国で整備されたデジタル学習環境について、ユニセフ(国連児童基金)は12月13日、各国が構築したプラットフォームの3分の1が完全に閉鎖されているか、更新されていなかったり、機能不全に陥っていたりしているとする報告書を公表した。報告書ではこうした活用の停滞によって、過去数年間に達成されたデジタル学習環境の進展が逆戻りする危険性があると指摘している。
今回公表された報告書「デジタル学習の動向(原題:Pulse Check on Digital Learning)」は、教育とテクノロジーについての研究機関である「EdTech Hub」と協働で、184カ国にある471のデジタル学習のプラットフォームについて、①方針と資金調達②プラットフォームとコンテンツ③教員と管理職④デジタルリテラシー⑤総合的な学習機会――の観点で調査した。
その結果、各国が構築したプラットフォームのうち32%が、完全に閉鎖されているか、更新されていない、機能不全に陥っているなどの状態にあることが分かった。この傾向は特に、サハラ以南のアフリカや南アジアの国で開発されたプラットフォームで多くみられた。
65%の国では複数のプラットフォームを保有しており、他のプラットフォームやソースにある既存のコンテンツをつなぐものや、学習管理システムによって学年・教科ごとのデジタル学習のカリキュラムを備えたものが一般的だった。
84%のプラットフォームは、その国の全ての公用語を利用できる環境が提供されており、85%のプラットフォームは、低中所得国の一般的な学習デバイスである携帯電話にも対応していた。
一方で、高所得国では49%、低所得国では18%のプラットフォームしか、オフラインで動作することができず、67%のプラットフォームは、主にビデオや教科書のPDFなど、静的コンテンツのみを提供していた。
また、障害のある子どもが利用しやすい機能を備えているプラットフォームは22%に過ぎず、機能が備わっていても、動画に字幕を付けるなどの基本的なものにとどまっていることも分かった。
報告書はこうした状況を「調査結果は、多くの国でデジタル学習プラットフォームの進歩が停滞しているか、後退していることさえあり、オフライン機能、アクセシビリティ機能、および基本的な双方向性がひどく欠けていることを示している。デジタル学習プラットフォームとコンテンツの公平性と品質保証のメカニズムを導入することが不可欠だ」と指摘。
教師のICTスキルの向上などの課題を挙げ、今後のデジタル学習環境の整備の進め方について、「時代遅れの教育と学習のモデルを複製することを避けるために、教育へのより広範な変革的アプローチが必要」と結論付けている。