中教審の「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」(座長・無藤隆白梅学園大学名誉教授)の第10回会合が12月16日、オンラインで開催され、「幼保小接続期の教育の質保障」について専門的な審議を行うため、同委員会に設けられたワーキンググループ(WG)からの報告書案を議論した。幼児教育施設の教育・保育者と、小学校の教師との相互理解が十分でない現状があるとして、カリキュラム作成や定期的な合同会議などを通じて「子供の姿の事例を通して具体的に対話することが重要」と指摘。また教育・保育者の多忙な現状を踏まえ、「精神的・時間的余裕を有しながら、生き生きとやりがいや充実感を持って幼児教育に取り組める環境としていくことが重要」と提言した。
同WGの報告書案では、①幼児期および幼保小接続期の教育②幼児教育を支える教育・保育者と環境③家庭や地域との連携④国や地方自治体の役割――の4つの観点から、今後求められる幼児期・幼保小接続期の在り方を整理した。
その上で、現状の課題について「幼児教育施設と小学校での生活の段差が大きいと、子供は不安や戸惑いを感じ、自己発揮もしにくく、小学校が楽しい場所だと思えなくなってしまう」「管理職も含め幼児教育施設の教育・保育者と小学校の教師との相互理解を深めるまでには至っていない」「教育・保育者が集まって話し合う時間や日々の幼児の記録を取る時間すらないほど多忙である」などと指摘した。
その上で報告書では、「幼児教育施設と小学校が共に架け橋期のカリキュラムを作成する」「幼保小の合同会議などを定期的に開催するなど、対話を継続するための工夫を行う」など、対話の重要性を指摘。「幼児期の学びが小学校の学習にどのようにつながっているかについて、幼児教育施設の教育・保育者と小学校の教師が子供の姿の事例を通して具体的に対話することが重要である。例えば、幼児期に友達と集めたどんぐりの合計数を数えたり同数に分け合ったりすることは数への興味や関心を高め、小学校の算数の学習にもつながっていく」と説明した。
こうした対話を可能にするため、架け橋期のコーディネーターや幼児教育アドバイザーの育成、管理職などの研修の充実、福祉との連携強化などを提言。教育・保育者の研修については「施設類型、幼児教育施設での役割、経験年数などに応じて求められるスキルや資質・能力を明確化し、関連する研修内容を体系的に整理し示すこと」「外部研修で受けた内容を現場で実践し、それをまた次の研修に持ち寄って研修を行うという『往還型研修』の取り組み」などを提言した。
さらに「日々の実践や対話の中で経験値として習得する知識・技能のように、体系化が難しいものが存在する。このようなものについては、日々の勤務において管理職や先輩からの助言などを通じて着実に習得できるよう、教育・保育者同士でさまざまなことを気軽に相談できる風通しの良い職場風土や時間的余裕を確保することが望まれる」とした。
これに対し委員からは「全ての小学校で、調整役となる校務分掌としてコーディネーターを位置付けることをしないと、なかなか進まないという実感がある」「これを行ったら各ステークホルダーにどのような良いことがあるのか、というメッセージを打ち出す必要がある」「昨今、教育・保育者に求められることが多い。国としても配置基準を改善するなど、働き方改革を推進してほしい」「先生一人一人の人生が公私ともにどう充実するのかが、すごく大事だ」といったさまざまな意見が寄せられた。同委員会は今回の委員の意見を踏まえて報告書の内容を再検討した上で、同委員会の審議経過報告に盛り込む見通し。