文科省の「教育データの利活用に関する有識者会議」は12月19日、第15回会合を開き、「教育データの利活用に係る留意事項 Q&A編」の案について議論した。Q&Aの案では学校現場の使いやすさ、分かりやすさを意識し、入学時・在学中・卒業時などの場面や、個人情報保護法に関連する問いと回答・解説を整理した。これから個人情報保護委員会など関係省庁との調整、パブリックコメントなどを経て、2023年4月の改正個人情報保護法(地方関係)の施行前、22年度内のなるべく早い段階で公表する。
今回の会合で提示されたQ&A案では、「パート1 総論関係」で教育データとは具体的にどのようなものを指すか、教育データの利活用を行うと、どんなメリットや課題があるかについて説明。「パート2 事例関係」では、「主に入学時・年度初め」「在学中」「卒業・進学・進級時」の場面ごとに、教育データの取得、利活用・管理、保存・削除などについて説明している。
また「パート3 個人情報保護法関係」では、個人情報とはどのようなものが当てはまるか、利用目的の特定はどのようにすればよいか、教育データを取得・利用・提供するにあたって同意が必要となるのはどのような場合か、外部に対して教育データを提供する際は、どのようなことに気を付ければよいか――などを解説している。
各項目を具体的に見ると、問いとそれに対する回答・解説が記載されている。例えば「個人情報が含まれる教育データについて、教育委員会や各学校が、異なる種類のデータ(校務系データと学習系データなど)同士を統合したり、分析したりすることは問題ないのか」という問いに対し、「異なる種類のデータを、単にダッシュボード上などで統合し一覧的に表示するのみであれば、利用目的の範囲外に当たることは基本的に想定しづらいため、原則として問題ないと考えられる」と解説している。
一方で「それらのデータの掛け合わせなどを通じて分析などを行う場合は、その分析によって新たな示唆を得る(例:出欠情報と単元テストの結果を掛け合わせて分析し、児童生徒本人の生徒指導に生かす場合など)など、個々のデータについて特定した利用目的の範囲内での利用とはいえないような利用になる場合もあると考えられるため、よく検討する必要がある」とし、利用目的の変更などの対応が必要になることを示している。
また、「教育データは、誰が閲覧してよいか」という問いに対しては、教育データの種類に応じて、行政系データは「行政職員および教職員」、校務系データは「教職員」、学習系データは「日々の教育活動に関係する教職員や児童生徒、保護者など」と明確化したほか、教育委員会や学校の判断において、教職員以外の専門スタッフが閲覧できるようにする可能性や、個別にアクセス権限を設ける必要がある場合などを解説した。
堀田龍也座長(東北大学大学院情報科学研究科教授)は「できれば2月下旬ごろには公表したい。このQ&Aは今後、追加・修正していくもので、不安をたくさん持っている現場に、早めに確実な範囲で提供したいと考えている。法令を厳密に扱う立場の方から見れば、問いが漠然としていて不明瞭に映るかもしれないが、現場目線でまとめていくのが本会議の役割。注意が必要な部分についてはしっかり書いた上で、ニーズが出てきた時に詳細を加筆していく」と説明した。