放課後児童対策でとりまとめ素案 学童保育の課題を検討

放課後児童対策でとりまとめ素案 学童保育の課題を検討
とりまとめ素案を検討した放課後児童対策に関する専門委員会の第14回会合(YouTubeで取材)
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 厚労省の社会保障審議会児童部会の放課後児童対策に関する専門委員会は12月21日、第14回会合をオンラインで開き、こども家庭庁の発足を見据えた同専門委員会としてのとりまとめの素案を検討した。とりまとめ素案は放課後児童クラブ(学童保育)の課題と児童館の在り方の2部構成とされ、児童館の在り方については、専門委員会の下に設けられた「児童館のあり方に関する検討ワーキンググループ(WG)」のとりまとめが組み込まれる予定。学童保育では待機児童対策や放課後子供教室との一体型の推進、障害のある子どもも参加できるインクルージョンの推進の3つの視点で今後の施策の方向性が示された。

 この日の会合ではまず、WGのとりまとめについての報告が行われ、専門委員会としてのとりまとめの中に、WGのとりまとめを「Ⅱ」として位置付けることを確認。その後、「Ⅰ」に当たる学童保育の喫緊の課題を中心にとりまとめ素案の検討を行った。

 とりまとめ素案の「Ⅰ」では、2023年度が「新・放課後子ども総合プラン」の最終年度であるとともに、こども家庭庁が創設されることを受けて、学童保育の喫緊の課題を▽待機児童対策▽学童保育と放課後子供教室の一体型の推進▽インクルージョンの推進▽その他――として整理。学童保育の実施場所のうち半数以上が学校の敷地内や余裕教室であることや、放課後子供教室との一体型の推進の観点から、余裕教室の活用や特別教室などの学校設備のタイムシェアの検討可能性について打ち出した。

 また、インクルージョンの推進では、障害のある子どもの利用に対して、職員体制などを理由に受け入れが困難であったり、障害特性に応じた対応ができずに対処を余儀なくされたりするケースがあるとして、多様な障害特性や医療的ケアへの対応が求められると指摘。

 インクルージョンが推進されることは、障害の有無に関わらず子どもがお互いを理解し合い、共生社会を創出する上で必要不可欠であるとしながらも、障害のある子どもの育成支援に関する専門的知識を持った職員の確保が困難であることや、障害のある子どもの利用についての実態把握を進め、当事者である子ども・保護者の意見を聴取するなどして、引き続き議論を重ねる必要があるとした。

 学校との連携に関して、委員の池本美香日本総合研究所上席主任研究員は「(学童保育に学校施設の一部を)それだけ長時間利用するとなると、タイムシェアという話も出ているが、そもそも、学校の空間や設備をもう少し放課後仕様にできないものかと感じる」と問題提起。校庭や特別教室について、放課後に学童保育などで利用することを想定した設計にすることを考えるべきだと提案した。

 一方で、放課後児童支援員の山田和江学童クラブ「清明っ子」代表は「コロナや災害で緊急事態になったときに情報が入ってこない。学校は閉まったけれど学童保育は空けないといけないといったときに対応が遅れる。こうした学校との連携はこれからの課題になる」と、現場の実情として、学校との施設を含めた連携の難しさを指摘した。

 また、山野則子大阪公立大学現代システム科学研究科教授は「子どもの最善の利益や子どもを支援しなければならないという観点で、どんな仕組みや連携の網をつくるか。今後、法的な所も含めて整備していく段階に来ているのではないか」と述べ、子どもの権利に則して、学校や放課後の居場所の連携を考えていくべきだと強調した。

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